AINプログラムの支援によるラオスの活動に向けた新たな挑戦
子どもの栄養に関する問題は健康に密接に関係し、成長してからでは解決できない場合もあり、「明日」ではなく、子どもたちの「今」に目を向ける必要があります。そこにISAPHの活動が母子保健に重点を置く意味があると思います。また、村での食事・栄養に関する問題の背景には、食べ物がないといったような第一義的な話だけではなく、社会的・文化的な要因も潜んでおり、解決が容易ではないことがこれまでの活動で分かりました。私たちは、村の母子保健を改善する支援の一つとして「妊婦や乳幼児の栄養状態の改善に取り組む」ことが地域のニーズであると捉え、2017年4月より、後で述べるようなAINプログラムのご支援により、新しい活動を展開しています。今日は、その活動についてご紹介したいと思います。
一つ目の活動は、地域の保健ボランティアとして、食事・栄養に関する知識を持った人たちを増やすことです。知識を伝える場合は、その問題に対する関心や理解力、字が読めない、書けないなどの問題も効果に影響します。しかし、「美味しい食事」については、多くの住民は興味があるようですから、そこにバランスの取れた栄養に関するエッセンスを加えることで、彼らの生活の一部として知識が浸透していくことが期待されます。ラオスの保健行政の戦略の一つに、地域の保健ボランティアを活用することがありますが、彼らは適切なトレーニングを受けることができていなかったり、その活動がうまく支援されていなかったりしています。この活動を通して、住民側は自ら健康になる方法を身に着け、行政がそれを推進するためにボランティアの活動を支えていく方法と技術を学んでいくことも大切な狙いです。
もう一つの活動は、住民の食材確保の方法を増やす試みです。ラオス農村部の住民は、自分たちが1年間食べるだけの米作を生業としている場合が多く、定職から得た給料があり、市場の食材を買って生活する人は多くありません。つまり、食卓に上る食材は、どうにかして自分たちで調達しなくてはいけないのです。特にタンパク質の源となる肉類は、定期的に食べることが難しく、彼らの不足している栄養素の一つでもあります。ラオスや隣国タイには、コオロギやカエル、ナマズなどを養殖する技術が既にありますので、それらを住民が家族規模で実施していけるように技術転換を行い、種類に富んだ食材を持続的に確保できることを目指して、試験的な運用を始めているところです。この取り組みは純粋な保健医療の活動とは異なります。とはいえ、食材の確保は子どもの健康を形づくる重要な要因の一つですので、ISAPHは保健医療の垣根に拘らずに、他の専門分野の関係者とも連携をして、住民の健康を守っていきたいと考えています。
これらの新しい活動は、公益財団法人味の素ファンデーション(AINプログラム)より助成金をいただくことで実現することができています。本助成金は、その土地の食文化に根差した住民参加型のプロジェクトを支えるための取り組みで、この度、ISAPHの新しい食事・栄養に関する活動に対してご支援をいただきました。これらの活動はまだ始まったばかりですから、成果の報告はこれからになります。活動の進捗や効果については、今後ニュースレターでお知らせしますので、どうぞ楽しみにお待ちください。
ISAPH LAOS 佐藤 優
村人の食材は季節によって採れるものが決まっており、
食材が極端に少なくなることも多い
(写真はタケノコだけのスープ)
「初めて離乳食なんて食べさせたよ!」と
11ヵ月の子どもを育てているおばあさん