日本でも古くから食べられている昆虫ですが、世界でも多くの国々が、多種多様な昆虫を食べていることが知られています。そして、2013年には、その価値について、国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations)から報告書が提出されたことをきっかけに、加速度的に、「食料としての昆虫」に世界中が注目するようになってきました。
私たちが活動するラオスにおいても、もちろん昆虫を食べることが文化として根付いていて、市場や村の食卓をみると、当たり前のように昆虫が食材として、料理として提供されています。
そのような、文化的な多様性は残していくべきだと私たちは考えていますし、ISAPHの活動では、「現地の住民の生活を他者が無理やり変えるのではなく、現地の生活に沿った支援を行う」ことが重要と考えていますので、昆虫食文化を上手に活用して、何か支援を行えないかと考えました。
「途上国だからといって、昆虫を食べさせるなんてヒドイ!」
そういうふうに思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私たちが活動する村のラオスの人たちは昆虫に対して「貧困食」という認識はありませんでした。
「美味しいから食べる」 本当に、ただそれだけ。
もちろん好き嫌いはあるようですが、老若男女問わず、多くの人に愛されています。それに、市場では昆虫の方が家畜の肉よりも高値で取引されているので、むしろ、お金がある人ほど市場で買って食べることができるんです。そうでない人は、林や森に出かけて、自分で採集しなくてはいけません。
このように、ラオスでは「沢山ある自然食材の一つ」として、首都から農村部まで昆虫食の文化がしっかりと浸透していることを感じることができます。だからこそ、その文化を強みにした方法で、人々の健康や暮らしをよくすることができないかと考えています。
「途上国だからといって、昆虫を食べさせるなんてヒドイ!」
そういうふうに思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私たちが活動する村のラオスの人たちは昆虫に対して「貧困食」という認識ではありませんでした。
「美味しいから食べる」 本当に、ただそれだけ。
もちろん好き嫌いはあるようですが、老若男女問わず、多くの人に愛されています。それに、市場では昆虫の方が家畜の肉よりも高値で取引されているので、むしろ、お金がある人ほど市場で買って食べることができるんです。そうでない人は、林や森に出かけて、自分で採集しなくてはいけません。
このように、ラオスでは「沢山ある自然食材の一つ」として、首都から農村部まで昆虫食の文化がしっかりと浸透していることを感じることができます。だからこそ、その文化を強みにした方法で、人々の健康や暮らしをよくすることができないかと考えています。
どんな食材も食べすぎはいけません。アフリカのナイジェリアでは、炭水化物のキャッサバと、高タンパクなアナフェというイモムシばかりを食べた地域でチアミン(ビタミンB1)欠乏症が発生した事例がありました。アナフェにはチアミンを分解する酵素が含まれていました。私達は活動地の栄養調査を実施することで、同様な事故が起こらないようモニターしています。昆虫の栄養は様々ですが、炭水化物が少ないことが特徴で、脂質は昆虫の種によって大きく異なりますが、たんぱく質は30%から70%と、畜肉と遜色なく含まれています。
昆虫を養殖して余れば、市場で所得にすることもできます。得られた現金で必要な栄養の食材を手に入れることもできますので、栄養教育も重要です。昆虫を売ってスナック菓子を買ったのでは改善にはならないでしょう。
私たちの食用昆虫養殖プロジェクトは、
①ラオスの食文化に根ざした昆虫養殖の技術をラオスから開発実装すること
②村で自給できる飼料から昆虫を養殖することで、手に入る食材の選択肢を増やすこと
③養殖した昆虫を売ることで、現金収入の機会とし、栄養教育を同時に行うことで栄養改善につなげること
を大切にして、ラオスの農村部で暮らす人々の健康状態の向上につなげていくことを目標にしています。
本当に色々な昆虫が食べられています。上述した、国際連合食糧農業機関(FAO)の報告書の中には、世界では1,900種類以上の昆虫が食べられていると報告されています。
ラオスでも、アリ・バッタ・コオロギ・タガメ・カメムシ・トンボ・スズメガ・カイコ・ハチなどなど…
市場に行くと、その季節に取れる色々な昆虫が売られているのをみることができます。
調理の方法はさまざまですが、少量の油でサッと炒めるのが多いかもしれません。他にも、蒸す・煮るなどの調理法があう昆虫もいるとのこと。村で暮らす人々は、食べることができる昆虫・できない昆虫、どうやって食べたら美味しいかなどの知識がとても豊富で、まるで住民全員が昆虫食博士のようです。
ラオス人が生卵を食べることに抵抗があるように、私たち日本人の中には、昆虫を食べることに抵抗がある人も多いと思います。育った環境・文化が違えば、価値観も異なります。それに、個人の好みもありますから、活動で、無理矢理に昆虫を食べさせるようなことはありません。
森で山菜を採ることと同様に、昆虫を捕るのも人手が必要ですから、高齢の家族や小さな子どもがいる世帯では、家を長時間空けるのが難しいなどがあります。また、自然界のなかでは季節の影響を受けてしまいますので、「安定して」食料を調達したり、生計の足しになる活動をするには養殖は大切です。また、昆虫は小さいので、養殖をするにも小さな容器でよく、ウシのような大型の家畜と比べて、お手軽に育てることができます。
この活動は2018年から本格的にスタートしました。それまでには、情報収集を行い、ラオスの色々な場所で、何種類かの昆虫がすでに養殖されていることを知りました。それで、そのような農家や個人を尋ねて、農村部・田舎の住民にも養殖が可能かどうかを検討してきました。
2018年11月には、私たちの活動に参加している住民のうち数世帯へ、実施が可能かどうか試験的に養殖技術を伝えてみることにしました。最初のうちは戸惑っていた住民も、数カ月するうちに、自分たちで餌を変化させるなどの工夫をする姿がみられ、しっかり収穫することができるようになりました。
2019年度には、さらに多くの世帯に試験的に昆虫を養殖してもらいましたが、どの家庭も最終的には上手に育てることができています。これによって、小学校を卒業していない人でも、文字が読めない人でも簡単に養殖ができるということが分かりました。
ゾウムシ
コオロギ
カイコ(エリサン)
これらの昆虫は、「売ってよし(収入)」「食べてよし(栄養)」「育ててよし(簡単)」の“3方よし”として認識されています。つまり、養殖して成長した昆虫は食料として自分で食べても良いし、近くの人や市場で売って現金収入とすることができます。
養殖昆虫を食べる場合、ウシ・ブタ・トリなどの家畜と異なり、家に冷蔵庫が無くても「今日、食べたい分だけ収穫し、調理する」ことが可能なことも利点です。さらに、昆虫は、他の家畜同様に、産卵させ、次世代を育てていくことができ、継続して、養殖していくことが可能です。
食べ方も色々とありますが、素焼きやスープに入れたり、揚げたりなどが多い印象です。いずれにしても、昆虫を養殖することは、季節に左右されず、安定して、栄養素の豊富な昆虫を食卓に加えることができるという点で、人々の栄養状態を改善する可能性を秘めていると考えています。
<素焼き>
<炒め>
<ゾウムシのチュオ>
<ゾウムシのスープ>
どんな人でも昆虫を養殖できるように昆虫養殖の仕組みを整えたり、支援をしたりするには、知識や専門性が不可欠です。そして、ISAPHの職員に食用昆虫を専門とする人はいません。ですから、私たちは食用昆虫を専門とする団体と協力してこの活動を展開しています。
「NPO法人 食用昆虫科学研究会」は、昆虫が当たり前の食材となる未来を目指して活動している専門家の方々で、この研究会と連携することで、私たちはこの活動を展開することができています。
食用昆虫科学研究会の理事長である佐伯真二郎さんは、この活動の責任者として、今、ラオスで頑張ってくれています。ISAPHの保健活動がより効果的に展開されるように、住民の生活基盤の向上を目指し、養殖技術を伝えています。
<活動の様子の紹介>
International Support and Partnership for Health
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