アジア生協協力基金『ラオス農村部における食用昆虫養殖農家の組織化を通じた生計向上支援事業』上半期報告書(2024年度)

1.概要

2024年度に開始された「食用昆虫養殖農家の組織化を通じた生計向上支援事業」は、アジア生協協力基金様のご支援を受け、ラオス農村部における昆虫養殖技術を活用した収入向上を目的としています。本事業は、養殖農家が生産技術の習得と組織化を通して、マーケットの求める質と量の基準を達成し、持続可能な収入源を確保し、住民の栄養改善と生計向上を目指しています。

2024年度の上半期において、ISAPHは養殖農家が生産するゾウムシの品質・供給量の改善に注力しました。本報告書では、上半期の進捗と課題、今後の展望についてお伝えします。

2.主な進捗

(1) 品質改善の取り組み

マーケットの求める昆虫の品質基準(1匹7g*)に達するため、ISAPHは以下の取り組みを行いました。

  • 飼育環境の改善:温度や湿度管理の強化を推奨し、農家で飼育設備の改善を行いました。生産された幼虫をランダムに10匹抽出し、平均的な重さを計測したところ、平均7.3グラムとなり、市場販売の品質をクリアできました。

*市場にニーズを調査したところ7g/匹の基準を満たせば買い取ってくれることがわかった。

(2) 生産量の増加

養殖量が市場の求める供給基準(週3kg)に達するために、複数の養殖農家が協力し合って生産しました。

  • 協同生産の試み:複数の農家が協力して生産開始時期をそろえて、まとめて出荷できるようにしました。その結果、1.2kgのゾウムシをサイブートン郡内で販売し、売れ残っていた合計1.5kgのゾウムシはターケーク郡内の市場に出荷することができました。

(3) 現金収入について

販売された昆虫は、消費者から高い評価を受け、需要があることが確認されました。

  • 試験販売の試み:品質改善および協同生産によって、養殖農家は249,000LAK(約1,700円)の現金収入を得ることができました。これにより、農家の意識が高まり、品質と供給力のさらなる向上に向けたモチベーションが向上しています。

(4) サイブートン郡生誕30周年イベントへの出店

養殖農家が出店し、育てた食用昆虫を調理して販売しました。

イベントでの成果:多くの来場者が昆虫食に関心を示してくれたおかげで、養殖農家は直接消費者の反応を得る貴重な経験を積むことができました。また、この出店活動により、農家たちは自分たちの製品を市場に投入する自信を得るとともに、昆虫養殖の収益化に向けた第一歩を踏み出しました。

養殖農家への品質技術向上支援も実施

サイブートン郡生誕30周年イベントでの養殖昆虫購入者と

カムアン県知事らによる試食

3.課題と今後の展望

(1) 品質改善の進捗が一部に留まる

大粒ゾウムシの生産において、湿度管理が十分でないこと、給餌頻度や量が守られていないため、目標の重量に達していない農家が見られました。生産マニュアルを通して、適切な養殖方法を広められるように支援する必要があります。

(2) 生産量の確保

全体的な生産量が市場の需要に追いついていないため、農家間での協力体制の強化が求められます。特に、生産スケジュールを調整し、安定した供給を維持する仕組み作りが必要です。

(3) 販路の開拓

協同生産されたゾウムシの販路拡大を目指す必要があります。イベントに出店するだけではなく、地域の小売店や飲食店との協力を深め、消費者に対して昆虫食品を広く提供していきます。

4.まとめ

2024年度上半期において、「食用昆虫養殖農家の組織化を通じた生計向上支援事業」は順調に進展し、品質改善や協同生産による一定の供給量の確保という成果が見られました。特に、サイブートン郡生誕30周年イベントでの出店が、農家にとって実際の市場での販売体験を提供し、生計向上の可能性を認識する重要な機会となりました。今後も組合の設立と持続可能な収入向上を目指し、さらなる活動を展開していきます。

ISAPHラオス事務所 石塚 貴章