ISAPH事務局
ISAPHラオス事務所では、住民の低収入に関連した低栄養の課題解決に向け、収入向上に資する食用昆虫養殖技術の普及を実施しています。
2024年度はアジア生協協力基金様にご支援をいただき、養殖農家が市場流通可能な品質の食用昆虫を生産し、試験販売を行うことでラオス農村部の住民たちの収入を向上させ、栄養バランスの取れた食事にアクセスできるようになることを目的とした活動を行ってきました。
1年間の活動を振り返り、今後の展望をご報告いたします。
<2024年度の主な成果>
2024年度は「養殖技術の向上と生産性の改善」に取り組みました。
・市場需要の高い大粒ゾウムシの生産→平均サイズを6.6gから7.1gへと向上
・冷凍加工トレーニングを実施→69世帯の養殖農家が参加
・真空パック技術の習得→品質保持期間の向上も確認
・寒冷期における養殖環境の安定化→寒冷期においても安定した生産が可能
現金収入の創出に関しては、45世帯がゾウムシの販売を経験し、世帯あたり平均750円、最大3,000円の収入を得ることができました。ラオス農村部の平均的な月収が日本円にして3,000円~4,000円ほどという事を考慮すると、素晴らしい成果です!
また、小売業者が求める販売量に合わせるため、複数世帯が協力して集約出荷するためのグループをつくり、体制を整える事が出来ました。
市場開拓と販売ルートの拡大にも取り組み、ターケーク郡およびサイブートン郡の市場で試験販売を行った結果、公務員や鉱山労働者を中心に安定した需要があることを確認しました。また、フードフェスティバルでの出店では、消費者の方々からゾウムシの加工食品に対するアンケートを収集し、その結果から今後の特産品としての可能性を示しました。
<2025年度に向けて>
2025年度も引き続き、アジア生協協力基金様にご支援をいただきながら、本事業を次のステップへと進める事が出来る体制が整いました。この場をお借りして、アジア生協協力基金様に深く御礼申し上げます。
2025年度は、昆虫食品の協同組合化と販路拡大を重点的に進める予定です。
具体的には、郡産業商業局の主導のもと、養殖農家だけでなくマーケティング担当者も含めた協同組合を形成し、安定的な生産体制の確立することを目指します。加えて、地域内での種苗生産能力を強化することで、養殖農家が自立できるよう支援していきます。また、協同販売の開始と販路拡大に向けた取り組みを進め、設立された協同組合を通じて、地域の小売店や飲食店との連携を強化し、消費者ニーズに応じた商品開発を推進していきます。
2024年度の活動を通じて、養殖農家が協力することで市場取引の実現が可能になるという手応えを得ることができました。2025年度は、昆虫食品協同組合の運営基盤を強化し、養殖農家の自立を支える仕組みを構築することを目標としています。また、販売ルートを拡大し、食用昆虫を持続可能な収入源とするための仕組みを整備することも重要な課題です。
今後も地域との連携を深めながら、安定した市場取引の実現に向けた取り組みを進めていきます。
ラオスの大切な食文化である「昆虫」を使った、地域の人々の力を育てる活動。2年目の挑戦も応援をよろしくお願いいたします!

冷凍加工トレーニングの真空パック体験

生活困窮世帯も食用昆虫養殖に挑戦

大粒ゾウムシ生産技術トレーニング
ISAPHラオス事務所 石塚 貴章