マラウイ・住民自身の意志で広がる、栄養改善の取り組み

ISAPHマラウイ事務所は、母子の栄養改善を目的として、JICA草の根事業を2021年末まで実施してきました。不足する栄養素を補う作物の栽培やレシピの導入、調理実習の実施によって、4割近い栄養阻害児の割合が25%まで減少させることができました。

JICA草の根事業期間中は、ムジンバ県マニャムラ地域の9村でプロジェクトを展開し、現在も活動を継続しています。加えて、それらの動きを知った周辺の村々からも「自分たちも新しい料理を作ってみたいので、教えに来てほしい」と声が上がり始め、活動の効果が対象地域外にも拡大しつつあります。

周辺の村への情報の伝搬には、口コミもありましたが、通信の発達も大きいようです。近年、農村地域でも高速通信が可能な携帯電話網が急速に整備され、村でも半数以上の世帯がスマートフォンを所有しています。事業実施時から、活動対象としていた村の人々はSNSのグループチャットを作り、離れた村同士でも情報交換できる環境になりました。そして現在、そのSNSから近隣の人々にとっては見たことのない料理を作って盛り上がる調理実習の様子などが流れてきて、関心を惹いているようです。

元々、ISAPHの調理実習では、道具や材料を一切提供していません。ISAPHからは、村の環境でも実現可能なレシピの動画をいくつも用意し、その中で人々が興味を持ったものがあったら、彼ら自身で必要なものを用意することにしていました。目指しているのは人々の暮らしに定着することですが、こちらから物資を提供してしまうと、その時限りのイベントに終わってしまい、各自が家庭でもやってみようという気になりません。そればかりか、「何かくれないとやりたくない」という依存体質にも繋がりかねません。予防接種のワクチンなど、外部から提供が必要なものは確かにありますが、日々の食材を無尽蔵に与えることは、持続的とは言えません。

パンケーキの調理実習を行う村のお母さんたち

生まれて初めてのパンケーキを食べる子どもたち

2022年11月、“初めて調理実習を実施する地域”の様子を実際に見に行きました。盛況な中、パンケーキやクリームシチューなど、ISAPH発の人気レシピを作り、味わっていました。「他にも学びたい」と声が上がり、翌月以降もパン焼き講習などが開かれています。

人は「負担してでも欲しい、食べたい」と思ったとき、自ら行動します

今、マラウイの農村では新しい動きが始まりつつあると感じます。

 

 

ISAPHマラウイ事務所 山本 作真