栄養改善プロジェクトの折り返し地点に際して

2018年5月から始まった3年半のプロジェクトは、2020年2月で期間の半分が過ぎました。

このプロジェクトは、対象地域に住む5歳未満児の栄養状態を改善するのが目的です。それには対象の子どもや妊婦、授乳中の母親たちに栄養のある食品を食べてもらうしかありません。しかし、ほとんど自給自足に近い暮らしをしている農村では、手に入る食材の種類は非常に限られ、他所から買ってくるお金もないのが現実です。また、日本のような妊産婦講習や、育児の情報が簡単に手に入る環境もありません。

実際、プロジェクト開始時の調査でも肉、魚、卵、乳製品などの動物性タンパク質をほとんどの世帯が全く食べておらず、他にもビタミンの豊富な食材の多くが村には一切ない現状が明らかになりました。

ISAPHは、各地域のグループで運営するコミュニティー菜園を指導し、タンパク源になる豆類や、ニンジン、改良品種のサツマイモなどビタミンの豊富な食材を導入し栽培指導を行いました。また、栄養確保だけでなく、現金収入源として需要の高いトマトやタマネギ、近年普及し始めたニンニクといった、市場競争力の高い作物も導入しています。これらを販売した収益で、肉や魚などの食品を購入できる様になるのが狙いです。コミュニティー菜園の開始から季節が一巡し、収穫された作物を種子や親株として、各家庭で栽培を始めるメンバーが2年目になって多く現れました。

また、各グループでは養鶏も開始しました。ISAPHが配布したヒヨコを、グループメンバーは餌代を出し合って飼育当番を交代で行い、育った鶏が卵を産むところまでこぎ着けました。卵はタンパク質、ビタミン、ミネラルのほとんどを含む重要な栄養源であり、現金収入源でもあり、また鶏を増やすための資源でもあります。

こうして食品の入手経路が少しずつ確保されてきましたが、これらの食品は対象となる人々に食べてもらう必要があります。

前述の地域グループを通じて、妊婦や母親、子どもたちの食事の摂り方、食品の栄養素、授乳、手洗いなどの衛生、感染症予防などの教育活動を行っています。特に人気があるのは調理実習で、栄養価の高い食品をどうやって食べるかを知ることはとても重要です。これまで、地域内で低栄養の子どもたちを多く見てきましたが、一時的に入院させる必要があるほど深刻な状態だった子が、食事の改善だけで数カ月後には元気になったケースもありました。

2020年2月、首都リロングウェで保健省、県保健局、地域ヘルスセンター、大学、JICAマラウイ事務所などから関係者を招き、中間報告会を実施しました。前述のような現状とアプローチの方法、これまでの進捗や成果を共有し、今後の方針について活発に意見交換がされました。

農業も保健も、始めてから結果が現れるまでに時間が必要です。これまでの取り組みで見えてきた成果や課題を踏まえて、後半の活動で更に前進できることを目指します。

ISAPHマラウイ 山本 作真

中間報告会で進捗を説明する
浦部プロジェクトマネージャー

調理実習でのひとコマ

グループで育てた鶏と記念撮影