ヘルスポスト建設などで長年友好関係があるムジンゲ村と、活発な活動が期待されるチボプリラ村の2村で活動が動き出しました。当プロジェクトでは栄養不良児、特に慢性の栄養不良を示す発育阻害児の改善を目的としています。今年の3月上旬に、政府の末端の保健要員であるHealth Surveillance Assistant(HSA)と母親グループリーダーを含む村のボランティア総勢36名を対象に「子どもの栄養に関する研修」を県保健局環境衛生課の職員を講師に実施しました。
研修では5歳未満の子ども、妊婦、授乳婦の栄養、6大食品、成長モニタリングの重要性、子どもの栄養を阻害する寄生虫感染、保健施設への搬送が必要な子どもの病気の症状、手洗いと安全な飲料水など多くを学びました。座学のあとには離乳食の調理実施を行い、メイズ(トウモロコシ)粥に様々な食材を添加した栄養価の高い離乳食を学びました。参加者にはエディンゲニの町のレストラン特製の昼食を提供し、好評でした。
研修期間の5日間は2村のボランティア同士の交流が刺激となり、また、互いの励ましにもなり、活発な研修となりました。今後は健康教育を通じ子どもの栄養に対する認識を高めることに力を注ぎ、自発的に自宅にある食材でより栄養価の高い離乳食作りを実践してもらうよう働きかけていくつもりです。
今回の研修での課題は参加者への日当の支払いでした。マラウイを含む多くの途上国では長年ドナーによる日当支払いの慣習があり、日当が目的の研修という本末転倒の事態になっており、現在マラウイで活動しているドナーの多くがそういった悪しき日当慣習を撲滅しようとしています。JICAもその中の一団体で、当プロジェクトはそういった趣旨に賛同し、基本的に現物支給(交通手段、スナック、飲み物、昼食等の提供)とし、現金の支払いは可能な限り行わないことにしました。政府関係者のみならず、村人も活動における日当の支払いを経験しており、交渉は難航しました。HSAなどは表向きは納得しているようでしたが、重い空気が漂い、何とも言えない圧迫感を感じました。ある村長からは「紙は出ないのか(お金は出ないのか)」というあからさまな質問があり、「出ないのであれば、お米、砂糖、塩などはもらえるか」などという率直な村人の意見もありました。また、ある村の村長は「自分の村で活動している団体がないので、村の発展のためにもぜひ他の村のようにプロジェクトをやってほしい。お金はいらない」という意見が出て、その村の村人は何も発言なしというところもありました。
結局、プロジェクトとしては日当の支払いはしないが、村人に対しては研修で学ぶ手洗いや調理実習の家庭での実践のため、石鹸と塩を配付することにしました。ボランティアはほぼ全員5日間参加しましたが、HSAは昼食を取ると午後は参加せずといった人たちが多々見受けられました。今後彼らのモチベーションをどのように高めていくかプロジェクトとして考えていきたいと思います。
お粥を調理中
質疑応答
ISAPH事務局 齋藤 智子