【ラオス】カムアン県ニョンマラート郡の母子の食事摂取状況および栄養状態に関する調査開始

こんにちは!事務局の安東です。

ラオスの農村部には、日本に住む私たちが思っている以上に健康的な生活や基本的な母子保健サービスから取り残されている人々がいます。

平均身長体重よりも低い子や、低体重で産まれてきた赤ちゃん、病院で出産するという意識が無く、自宅の不衛生な場所で出産をするお母さん、病院を受診すれば治るはずの病気で亡くなってしまう子どもなど、日本の社会を生きる私たちには想像ができないような環境で健康と命の危険に曝されている人々がいます。

ISAPHはこれまで、セバンファイ郡、サイブ―トン郡で農村部の人々が、自分たちの力で健康的な生活を営むことができるよう、アウトリーチ活動(母子保健活動)や食用昆虫養殖事業等を実施してきました。その結果、この地域に住む人々の栄養状態や意識が改善されつつあり、施設分娩率においては介入前約51.0%から介入後83.3%へと改善をすることが出来ています。

しかしラオスにはこのような地域がまだまだ多くあり、活動を拡大していく必要があります。

そこで今回(12/22~12/31)ラオスへ出張し、支援が必要と思われるニョンマラート郡の2つのヘルスセンター管轄地域の村を対象に、どのような生活環境なのか、どのような物を食べているのか、飲料水や食料の調達方法はどうか、乳幼児への離乳食は何を与えているか等の栄養に関する調査を行いましたので、ご報告させていただきます。

カムアン県の保健局長を訪問。栄養調査の目的とスケジュールについて確認。

ニョンマラート郡の保健局長を訪問。日本はお正月が近いのでお土産に鏡餅を持参。

一緒に栄養調査を行うニョンマラート保健センターにも訪れ、三浦専門家が中心となり、調査の打ち合わせも行った。

<ニョンマラート郡ニョンマラート保健センター管轄の村>

2チームに分かれて、食生活と栄養に関する聞き取り調査を実施しました。

この時期のラオスは乾季ですが、調査対象地の村では、キャッサバの収穫に加え、川や地下水を利用した二期作(12月田植え→4月収穫)を行っていました。そのため、家庭訪問をしてみると、朝早くから夕方まで祖父母に預けられている乳幼児の姿も見られました。

乳幼児を預かっているおじいちゃんに「どんな離乳食を与えているの?」と伺ったところ、「この子のお母さんが田畑から帰ってくるまでは、お菓子と豆乳を与えているよ。」という回答でした。

同伴してもらっている保健センターの職員から栄養についてのアドバイスをしてもらいましたが、両親が直接、子どもに食事を与える時間がないという就労状況が子どもの栄養摂取にネガティブな影響を起こしているかもしれません。

乳幼児を預かっているおじいちゃんに聞き取り調査。

二期作を行っている田んぼ。農村部では殆どの農家が自分たちの食べるもち米を栽培している。

家庭訪問して子の食事摂取状況と健康状態を確認。

<ニョンマラート郡シェンダオ保健センター管轄の村>

ニョンマラート郡の東端(郡庁所在地から約50km)に位置するシェンダオ保健センター管轄の村を訪れました。

住民のお宅を覗いてみると、以前、赤十字社が配布したセラミックフィルターによる簡易浄水タンクで飲み水を常備している世帯を多く見かけました。細菌や寄生虫が濾過されて、煮沸することなく飲めるそうです。

今回の調査では、不足しがちなビタミンAに富んだ食材としてカボチャの栽培や摂取状況についても聞き取りしました。ビタミンAが不足すると、視覚障害(夜盲症)や免疫力の低下が起こりやすくなり、小児においては感染症のリスクが高まるほか、発育にも悪影響を及ぼす可能性があります。

ビタミンAを豊富に含むカボチャですが、今のところは「食べ慣れていない」や「栽培が難しい(雨季にしか育たない・実が大きくならない)」といった理由で栽培・定期摂取している家庭はあまり多くありませんでした。中には、水田の脇でお米と一緒に育てている世帯もありましたが、いわゆる家庭菜園としては葉物野菜・香草類が人気でした。また、たけのこスープの摂取頻度も高く、たけのこを乾季に備えて水煮にして蓄えている世帯も多くみられました。

母親は比較的、数多くの食材を摂取している一方で、6~23カ月児の食事摂取はとてもシンプルで、もち米とおかず一品(ゆで卵や焼き魚など)というケースがほとんどでした。ティップカオ(おひつ)に入ったもち米を乳幼児の近くに置いておくことで、子どもがお腹を空かせたら自らティップカオの蓋を開けて、(おやつ感覚で?)もち米を口に入れているような場面も見受けられました。

赤十字社が配布した簡易浄水タンク。全世帯にあるというわけではない。

乳幼児のお母さんに前日に自分が食べたものや子どもに食べさせたものについての聞き取り調査。

住民宅の家庭菜園。葉物野菜や香草類を栽培している。

住民のニーズに則した支援を目指して

まだ限られた地域と特定の季節においてという条件付きの情報収集の段階ではありますが、両親の多忙な就労状況や子どもの栄養に対する親の関心の低さによって、栄養摂取が主食であるもち米(炭水化物)に著しく偏っていることが懸念されます。子どもと比較すると、両親は比較的バラエティに富んだ食材を食べています。手間暇をかけずに、乳幼児がもち米と一緒にゆで卵や緑黄色野菜を摂取できるような支援が必要です。

ニョンマラート郡で行っている調査は今後、隣接するナーカーイ郡やボラパー郡にも広げていきます。最終的な調査結果を基に、地域住民が持続可能な方法で栄養状態を改善できるよう、引き続き現地のニーズに即した支援策を検討してまいりますので、引き続きISAPHの活動を応援してくださいますと幸いです。

調査に協力してくれた母子と。

ISAPH事務局 安東 久雄