日本国際保健医療学会に参加して

2013年11月2、3日に沖縄県名護市の名桜大学で開催された第28回日本国際保健医療学会学術大会へ参加しました。この学会は、国際保健に関わる教育・研究を通じて国際協力の促進と人材育成を行う学術団体で、会員は大学・研究機関・国際機関・病院・NPOの職員や、大学院生、学部生等です。

現在、ラオス母子保健プロジェクトでは公益信託今井記念海外協力基金にご支援頂き、ISAPHの活動地区の1つであるカムアン県セバンファイ郡シーブンアン地区ブンフアナー村ドンサワン集落(人口209名)で寄生虫感染予防対策を重点的に行っています。

2013年5月のプロジェクト開始時には、寄生虫の種類や感染経路、予防方法についてどれくらい住民が認識しているかを1世帯につき1~3人を対象として実施しました。この聞き取り調査によって、感染経路を認識していない人達が多くいるということが分かったため、現在、土壌を介して感染する鉤虫・鞭虫・回虫や淡水魚を生で食べることによって感染するタイ肝吸虫の感染経路と予防対策を中心に健康教育を定期的に行っています。

ポスターセッションの様子

聞き取り調査後は、住民の寄生虫感染状況を把握するため郡保健局と共に便検査を行い、寄生虫卵保有者へは駆虫薬を投与しました。駆虫薬投与前には夜間健康フェアを実施しラオスのダンスや椅子取りゲーム、手洗い競争等のゲームを取り入れ、住民達が楽しみながら健康フェアへ参加できるよう工夫をし、①寄生虫感染症、②症状、③治療方法、④予防方法についての衛生教育を行いました。駆虫薬投薬後は、駆虫薬の治療効果を判定するため再度便検査を行い、駆虫しきれなかった住民には投薬、検査を繰り返しています。

今回の学会ではこの寄生虫感染対策活動で得られた結果や問題点の一部を「ラオス農村部におけるメベンダゾール単回投与による腸管寄生虫駆虫効果の検討」と題してポスターセッションで報告しました。

寄生虫感染予防対策の活動の1つとして、土壌伝搬腸管寄生虫感染者へは、WHOやラオス国家寄生虫対策にも明記されているようにメベンダゾール(500mg)の単回投与により治療を行っています。しかし、治療薬を投与しても駆虫しきれなかった症例や慢性的に鉤虫に感染している症例も否定できなかったため、今回の発表を通して今後の対応策等に役立つ情報収集を行うことも兼ねての参加でした。発表後は、数名の先生方から今後の治療方針のアドバイスや対象地区以外での寄生虫感染状況に関するご意見を頂くことができました。

今回の発表を通して得たアドバイスやご意見を元に今後の治療方針についてカムアン県保健局、セバンファイ郡保健局とともに検討し、安全でより効果的な治療を地域住民へ提供できるよう今後も活動を行っていきたいと思います。

ISAPH LAOS 楾 清美