調理実習を通し、楽しみながら栄養改善を

好きな食べ物は何?」そう聞かれて、何と答えますか?

日本には様々な国の料理があり、答えに迷ってしまうくらいだと思います。マラウイで同じ質問をすると、きっと多くの人が「シマ」と答えるでしょう。シマというのは、マラウイの主食でトウモロコシの粉をお湯で練ったものです。

よく、「マラウイの食事はどんな感じ?」と聞かれますが、私は決まって「主食はトウモロコシで、おかずは葉野菜。味付けは基本的に塩だけ。それにトマトか油を使うくらい」と答えます。これでマラウイの食事に関して8割のことが言い尽くせていると思うくらい、バリエーションが少ないと感じます。他にイモ類やカボチャなども食べますが、やはり炭水化物が中心です。味付けも塩味で煮るか、油で揚げるのみ。また、プロジェクト開始時に行った調査からも、子どもの成長に必要な卵や肉・魚などの動物性タンパク質やカルシウム、ビタミン類を食べる機会がとても少ないという結果が明らかになっています。それだけ農村部の食事は保守的で、食材も調味料もバリエーションが少なく、炭水化物が中心のために栄養が偏ってしまうことが問題となっています。

このような状況を改善する為、ISAPHでは住民を対象に調理実習を実施し、普段の調理に色々な食材を加えるアレンジ方法や、人参やガーリックなど住民に馴染みのない食材の調理方法、スコーンやお米のポリッジ(お粥)など新しいレシピの紹介などを行っています。そして調理実習を通し、もっと「食事」を楽しんで欲しいと考えています。必要だから、体にいいから、というだけではなかなか行動は変わりません。だからこそ住民には、調理実習を通し今まで知らなかった美味しくて栄養価の高い食材や調理方法があることを知ってもらいたい。そして、美味しいという感覚を楽しみ、そこから栄養改善へと繋がって欲しいと思っています。

また、近年地方都市レベルではレストランでカレー粉やビーフストックを使用するようになってきました。私が初めてマラウイに来た5年前には見られなかった味付けです。少しずつですが、変化が見える今なら新しい食材や調味料が受け入れてもらえるのでは?と可能性を感じています。

先日、日本の洋菓子であるスイートポテトのレシピを紹介しました。使用したサツマイモはビタミンAが豊富な改良種で、ISAPHが活動エリアへ紹介しグループ菜園で収穫したものです。メンバーはそれぞれ食材を持ち寄るか、グループで貯めたお金で食材を準備します。何人かのメンバーは薪を頭の上に乗せてやってきます。手際よくブロックと薪を配置し、かまどを作り、調理実習のスタートです。サツマイモの食べ方と言えば、「煮る」が主流のマラウイ。参加者たちはスイートポテトの作り方に興味津々でした。レシピは牛乳・マーガリン・砂糖・卵を使用しており、不足しがちなタンパク質やカルシウムが摂取できます。試食では子どもにも大人にも、とても美味しいと好評でした。今後も現地スタッフと協力し、新たなレシピの考案や日本のレシピの紹介を行っていきたいと思います。

ISAPH マラウイ 池邉 佳織

月に2回グループメンバーが集まり、
新しいレシピを学ぶ

スイートポテトを調理中

嬉しそうに試食する子ども