2018年4月19日~21日に、ISAPHラオス事務所にて東京女子医科大学のスタディツアーの受け入れをいたしました。東京女子医科大学教授・ISAPH理事の杉下智彦先生と、ISAPHラオス事務所の木村職員のレポートをご紹介いたします。
ISAPH 事務局
ラオスにおけるISAPH活動を通して医師としての学を深める
このたび、ISAPH東京事務所およびラオス事務所の皆様から篤いご支援を頂き、東京女子医科大学医学部6年生7名が選択臨床実習の一環として現地サイブートン郡での活動に参加する機会を得ることができました。引率教員といたしまして、ご尽力を頂きました日本・ラオスの皆様方に、心より感謝いたしております。
ラオスの首都ビエンチャンから約400キロ離れたタケク市では、ISAPHラオス事務所の佐藤職員、木村職員、ナショナルスタッフの皆様に引率していただき、タケクの保健局や県病院を視察しました。翌日は、悪路を揺られながらサイブートン郡を訪問し、郡保健局を見学し、村落栄養ボランティア育成研修に参加しました。各村のボランティアと一緒に料理を作りながら、現地の健康状況について学びを深めることができました。
さらにサイブートン郡で1泊して翌日は、今回のフィールド研修のクライマックス、3組に分かれてISAPHが支援している貧困家庭への戸別訪問を行いました。いきなり、村の伝統的な結婚式に遭遇した後に、各家庭にお邪魔して、竹やぶで蜂の子を取ったり、魚を取ったり、食用昆虫を捕まえたり、現地の皆さんと1日一緒に過ごしながら様々なことをお話しして、ラオスの保健事情について学びました。
私が訪問した家庭では、最近、出産1か月で病院に連れていくこともできずに、赤ちゃんが亡くなった話を聞きました。「どうせ病院なんて行っても何にもいいことないんだよ…」とつぶやいたお父さん。医学生の皆さんも、諦めと怒りと後悔が織り交じったやり場のなさを感じながら、「医師として私たちにできることはあるのだろうか?」と涙で瞳が潤んでいました。
今回のラオス訪問では、一方で発展が著しい首都ビエンチャンと、貧困と病気にあえぐサイブートン郡の村と、ラオスにおける経済格差の伸長がそのまま健康格差に影響を与えているということを実感することができました。本当に短い時間でしたが、途上国保健のまさに最前線を経験し、帰国後、「なんだか心豊かに生きている村の生活がとても懐かしい」と口々に話してくれた7名の医学生。これからも医師として成長していく過程をずっと見守っていきたいと思っています。
東京女子医科大学スタディツアーの報告
2018年4月に東京女子医科大学のスタディツアーが実施されました。今回はISAPHラオス事務所がこれまでに受け入れてきたスタディツアーでは初の試みとして、学生さんたちが貧困家庭に滞在しましたので、その活動をご報告したいと思います。
今回は、ISAPHが緊急搬送基金・生計向上支援を行っているパーコーン村の委員会メンバーの中で、特にISAPHの強い味方である村のお世話役カムラーさんに、5歳未満の乳幼児を持つ家庭を3世帯選んでもらい、学生さんたちは3チームに分かれて各家庭に一日滞在しました。ISAPHからは、普段している食料確保のための活動を盛り込んで欲しいことと、昼食は普段食べているものにして欲しいということを最低限のリクエストとして事前に伝えていましたが、あとは各世帯にお任せ。参加者のほとんどが海外は今回が初めてということで、少し不安そうな面持ちの彼女らを思い切って送り出しました。
ラオスの時間はいつものようにゆったりと過ぎていき、それぞれのグループを約束の時間に迎えに行くと…そこには、朝の顔つきとは別人のような晴れ晴れとした素晴らしい笑顔の学生さんたちが待っていました。各グループは、それぞれの世帯で保健医療や村の生活に関して知りたかったことを聞き取りしたあと、以下のようなユニークな活動や体験をしたことを、目を輝かせながら教えてくれました。
グループ①
魚とり、カナブン入りタケノコスープに挑戦、子どもたちとお絵かき
グループ②
カニ・カエル・赤アリとその卵の採集、採集したものでランチ、お絵かき
グループ③
タケノコ・ハチミツと蜂の子・昆虫採集、昆虫食ランチに挑戦
その日のうちにISAPHのラオス事務所があるタケクに戻り、今回の貧困家庭訪問で感じたことをみんなで共有したところ、「ただ単に病院に行けないことだけではなく、教育や食料確保の問題など、その背景にある多くの問題を理解することができた」「このような難しい世帯にどういう支援をしたらいいのか分からない」「ラオス人は貧しいから可哀想だと思いこんでいたけれど、実際に村人の生活の様子を見てみると、彼らはたくさん笑って、のんびりと幸せそうに生活していた」という意見が聞かれました。
ISAPHの活動する対象村では、提供される母子保健医療サービスの質やアクセスの問題はもとより、教育レベルが低く理解力・判断力に乏しいこと、栄養価の高い食料の確保、緊急時の医療費・現金収入の不足、インフラの未整備など、本当に様々な問題が複雑に絡み合って、現状を形作っています。どの問題一つとっても、日本と比べると決して恵まれた環境とは言えないかも知れません。でもその環境の中、彼らは家族の絆を何よりも大事にし、お互いに助け合いながら、日々彼らなりの「豊かな生活」を送っています。
今回貧困家庭に滞在し、その状況を自ら五感で体感することによって、学生さんたちはラオスの村のありのままの生活とその豊かさを本当の意味で理解し、それが大きな気づきとなったのだと感じています。
来年から医師として働き始める学生さんたちには、今回のスタディツアーでの学びや気づきを心に留め、これから物質的な豊かさだけではない、本当の意味で豊かな日本、世界の創造のために大きく飛躍してほしいと願っています。
採集したハチの巣(ハチミツ・蜂の子入り)と
記念撮影
昼食でカナブン入りのスープに挑戦!
最後にお礼として掛布団をプレゼント