ISAPHラオス事務所 三浦 夕季
こんにちは。ラオス事務所の三浦です。
ISAPHは、サイブートン郡で住民への昆虫養殖を通じた低栄養改善に取り組んでいますが、このたび新たにカムアン県のナーカーイ郡とボラパー郡の保健センターにおいて、栄養改善に向けた基盤整備活動を開始しました。
ラオスにおける子どもの栄養不良は依然として大きな課題です。特にカムアン県の遠隔地ではその割合が高く、十分な支援が行き届いていない現状があります。昨年度、同郡で実施した栄養調査では、乳幼児の栄養状態を確認する基本的な機材である「身長計」「体重計」が故障していたり、身長計の代わりにメジャーが使用されるなど、正確な評価に適さない機材が使われている状況が明らかになりました。
保健センターは住民にとって健康の”窓口”であり、一時医療を提供する重要な拠点ですが、これでは栄養状態を正しく評価できないだけでなく、保健医療従事者が根拠をもって住民と対話することも困難となります。
雨季で橋が壊れている道路
(ボラパー)
バイクでしか移動できない場所にある
保健センターへ(ナーカーイ郡)
ナーカーイ郡奥地の保健センターへの
移動手段である船
身長計の代わりに使用されているメジャー
正しく作動しない体重計
そこでISAPHは、保健センター職員が地域の栄養状態を正しく評価し、適切な栄養指導や治療につなげられるよう、医療機関への身体計測機材の配備を開始しました。とはいえ、これは栄養改善に向けた”第一歩”にすぎません。たとえ適切な機材で正確なデータを測定・評価できたとしても、その結果を住民の目線に合わせて伝え、寄り添いながら支援できなければ、栄養不良を予防・改善できる食習慣の定着にはつながらないからです。
もちろん、栄養改善は医療者の努力だけで解決できるものではありません。経済的制約や食事へのアクセス、食習慣など、住民の生活背景も大きく影響しています。ISAPHは今後、住民の生活を向上させるボトムアップ支援も行っていく予定ですが、その中でも重要なのは、医療従事者が住民の前向きな変化を後押しする存在であることです。
身長計・体重計を配備
実際の活動では、船での移動が必要なナカイ郡の4つの保健センターのうち、中核となる保健センターを拠点に、医療従事者を対象とした参加型のワークショップを実施しました。
機材の配備に加え、正しい使用方法や低栄養の基礎知識、栄養評価方法に関する講義・演習を行い、機材配備の目的や、栄養改善に向けた今後の方針についても、参加者全員で共通理解を深めました。当日は4つの保健センターから9人の医療従事者が参加し、遠隔地での限られた研修機会の中で、有益な学びの場となったと考えます。また、県保健局カウンターパートにとっては初めての遠隔地の保健センター訪問であり、現状把握や地域スタッフとの信頼関係構築において、今後の活動に資する機会となりました。
ワークショップの様子
評価方法の演習
グループ演習
今後は、今回の機材配備やワークショップが単なるイベントで終わらないよう、各保健センターを順次訪問し、実践状況や現地のニーズを確認しながら、モニタリング行っていく予定です。
これからも、地域に根ざした持続的な栄養改善の実現に向け、一歩一歩着実に取り組んでまいります。
※本事業は『公益信託今井記念海外協力基金』『公益信託アドラ国際援助基金』の助成を受けて実施しております。