緊急搬送基金(EHF)
リボルビングファンド(RF)
稲作ローンは、1サイクルを終了しました。1名を除く全ての借入者がほぼ期限通りに完済し、大変好調です。小規模ビジネスについては、村では稲作以外の生計向上活動が乏しく、2019年に借り入れたメンバーの返済状況も良くないことから、2020年は稲作ローンのみ実施することとなりました。
貯蓄
開始当初から比べると毎月の貯蓄額は減ってはいますが、メンバーに貯蓄の習慣が根付き、緊急時の医療費や子供の学費を自分の貯蓄を引き出して賄えるようになったメンバーも少なくありません。需要の多い稲作ローンの貸付額の上限は、貯蓄額の10倍となっているため、メンバーは4月に大きな額を貯蓄し、稲作ローンをできるだけ多く借りようとする傾向が見られ、原資の増加に繋がっています。
収支全般
ISAPHは基金の原資の資金提供は一切せず、原資は全て他団体の負債回収から賄われているため、原資を地道に増やしていく必要がありますが、2019年度は貯蓄の利子を差し引いても、300万キープ(約4万円弱)の純利益が出ました。この利益は、基金委員会の報酬や村の社会福祉のために利用されます。純利益の一部にこれまでに累積した貯蓄を加えると、2020年度の稲作ローンの原資は、2019年のほぼ倍額の約30万円となる予定です。
ここで、以前にニュースレター第31号でお伝えしたパーコーン村で一番貧しいウォンさんのその後についてお伝えしたいと思います。彼女は、2017年に病院に行くための交通費1万キープ(約130円)を用意できず、第4子を生後2か月で亡くしていましたが、2019年初旬にEHFを借り入れ、第5子を無事に病院で出産することができました。もしEHFがなければ、彼女はまた不衛生な自宅で出産し、母子の命を危険にさらしていたかも知れません。
ラオスの村で基金を運営していくにあたり、これまで大小さまざまな問題に直面し、試行錯誤を繰り返しながら何とかここまできました。しかし、この基金が村のセーフティーネットとして機能し続け、多くの村民の助けとなるためには、今後も継続した基金へのコミットメントが必要です。
2020年は、基金をEHFと稲作ローン・貯蓄のみとし、基金管理をよりシンプルな形にする予定です。ISAPHは引き続き、村の基金委員会の運営・管理能力の向上支援に取り組み、2021年3月を目途にこの基金運営を完全に村の基金委員会に移譲し、この基金が本当の意味で村の基金となるよう、今後も後方支援を続けていきたいと考えています。
ISAPH事務局 木村 江里子
緊急搬送基金を利用して、
無事に病院で出産したウォンさん
小規模融資を借りて建設した
屋根付きの小売店
2019年 年次会議の様子