アフリカとTICAD、そしてUHCとISAPH

アフリカ大陸の総面積は3037万㎢であり、世界全体の22.5%、アジア大陸の68.1%、ロシア連邦の1.78倍に及びます。2019年時点のアフリカの人口は10億6600万人、世界全体の人口77億人の13.8%を占めていますが、2050年には21億1800万人、2100年には約38億人まで増加し、世界の人口の3割強を占める見通しです(2019年国際連合広報センター資料)。また、開発技術の進歩に伴い、アフリカの石油・天然ガス産出量が伸びており、ダイヤモンドやプラチナ、コバルト他のレアメタルなど豊富な地下の鉱物資源についても世界から注目されています。さらに国連加盟国193ヶ国のうち、アフリカ地域は54ヶ国を占めており、国際政治の分野でも約28%の重みを持っています。このように、アフリカ大陸は、未だ開発上の問題が多く存在すると言われながらも、その将来性に大きな期待が寄せられています。

日本のアフリカ支援の大きな柱は、1993年に始まったTICAD(Tokyo International Conference on African Development:アフリカ開発会議)です。このTICADでの支援の大きな柱の一つは、保健医療分野での協力です。2016年のナイロビでのTICAD VIにおいて、日本は、アフリカでの人材育成を通じて公衆衛生危機への対応能力の強化、UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバリッジ)の実現に貢献していくという決意を表明しました。UHCとは、全ての人が健康増進・予防・治療・機能回復に関する保健サービスを必要なときに負担可能な費用で受けられることを意味しています。2019年8月に横浜で開催されたTICAD VIIでもこのUHC重視の方針は引き継がれました。保健医療分野における日本の国際協力の具体例としては、ポリオ(急性灰白髄炎)撲滅のためのワクチン供与などが知られていますが、近年、日本政府が一丸となって推進しているのがこのUHCです。日本とアフリカとの繋がりについて一つ補足します。2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智教授の発見したエバーメクチンを基に寄生虫薬イベルメクチンが作られ、ビル・ゲイツ財団の協力を得て、西アフリカでオンコセルカ病に冒された人々を助けています。

ISAPHが2005年よりアフリカのマラウイで活動を展開している母子保健関連プロジェクトはこのUHCの考え方に沿ったものです。ISAPHは10年以上にわたり、マラウイの北部ムジンバ県で、母と子の健康を守る活動に取り組んで来ました。2013年5月から3年間実施されたJICA草の根技術協力事業「子どもにやさしい地域保健プロジェクト」では、乳幼児の栄養状態を大きく改善することが出来ました。このプロジェクトは国内外の関係者から高く評価され、2018年には2度目となるJICA草の根技術協力事業が始まりました。新しいプロジェクトでは、その恩恵を受ける対象者の数が従来の1.5倍に増加しました。また、母子の食糧安全保障(Food Security)の観点も取り入れられ、換金用農作物や家畜家禽の活動も導入されました。

2015年に策定された「持続可能な開発目標(SDGs)」においては、国連ミレニアム開発目標(MDGs)の大きな柱の一つであった母子保健の改善という課題が引き継がれました。ISAPHとしては、マラウイの保健医療分野において従来どおり地道な活動を続けていくことが大切であると考えています。

ISAPH理事 渡部 和男

ISAPHが活動している
マラウイ共和国のムジンバ県

母親の栄養についての知識が
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