アクセスが困難な地域で、子どもたちの栄養不良を減らすための基盤づくり
自分の子どもが健やかに成長しているかどうかは、多くの保護者が日々、気にしていることかもしれません。しかし、ラオス農村部にある医療機関では必要な機材が整備されていなかったり、職員への研修が不十分で子どもたちの成長を確認するための「身体計測」が殆ど実施されていません。自分の家に身長計・体重計がある保護者はいませんから、自分の子どもの身長や体重がどれほど伸びているか(=子どもの栄養状態が良いのか悪いのか)、分からないまま過ごしています。2024年に実施した調査では、5歳未満児の8%しか、1年間に身長・体重を計測できていませんでした。
ISAPHラオスは、その状況を改善するために、ラオス農村部の医療機関とその周辺の村落を対象とした事業を開始しました。本事業は、外務省が管轄している「日本NGO連携無償資金協力(注1)」の一つの事業として実施されます。
事業の期間は、2026年3月から2027年3月までの1年間。短い期間ではありますが、この間に「良質な保健サービス」と「保健サービスにアクセスしやすくなる環境」に2つの改善に取り組みます。一つの目標は、医療機関が実施する身体計測サービスの改善。壊れていたり、古くて正確に測定できない身長計・体重計を「正確な測定が可能な機材」に入れ替えます。同時に、新しい身長計・体重計を使用した計測や、計測後の栄養不良の評価、住民への保健指導技術について、保健医療従事者を対象とした研修を提供します。これにより、住民が正しい情報にアクセスできるようになります。
はじめての体重計測に怖がる子ども
目盛り部分が擦り切れて使えなくなった臥位身長計
古くなり、正確な測定ができなくなった体重計
もう一つは、住民側の情報伝達の改善です。事業の対象となる村々では、インターネットが通じなかったり、電気が通っていなかったりします。ラオス農村部では、医療機関へのアクセスが難しいため医療従事者が村落に出張して保健サービスを提供していますが、「その日」を伝えることが大変難しくなっています。カレンダーも浸透していないため「〇月×日」と伝えても効果がありません。一番効果が高いのは、住民が田畑に出てしまう前に、出張保健サービスがあることを当日の朝に「村内スピーカー」で伝えることです。しかし、すべての村落にスピーカーがあるわけではありませんし、スピーカーが足らずに音が届かない地域もあります。その課題に私たちは気づき、村内の情報伝達インフラの整備を行います。
加えて、スピーカーで放送するのは「村落保健委員会」と呼ばれる、いわゆる町内会の保健部門。参加する住民は一般のボランティアですので、「なぜ、身長や体重を測ることが大切なのか」「栄養不足の子どもはどのようなリスクを抱えているか」など、村内放送をするためのモチベーションを高める研修も提供します。これらの取り組みによって、5歳未満児の80%以上が1年間に1度以上、身長・体重計測を実施できることを目指しています。
今回のような現地の「具体的な課題」に目をつけることができたのは、ISAPHが20年以上、ラオスの農村部で活動をしてきたことが背景にあります。ラオスの農村部や遠隔地でどのような問題が起こりやすいのか、また現地の仕組みを熟知しているからこそ、改善のために必要な取り組みが何であるかをラオス政府と一緒に提案することができました。
この事業は1年で終わってしまいますが、私たちの最終目標は、アクセスの悪い農村地域の子どもたちの栄養不良を減らすことです。その意味では、今回の活動は出発点。この事業を通じて、さらに子どもが日々摂取する食事を変えていけるように活動は広がっていく予定です。是非、これからも私たちの活動を見て、応援していただけると嬉しいです。
子どもの成長の大切さを学ぶ、ISAPHの村落ボランティア研修(写真は別の地域のもの)
ISAPH東京事務所 佐藤 優
注1:「日本NGO連携無償資金協力」は、日本政府が実施するODA(政府開発援助)の一つです。毎年、日本のNGOが提案する事業世界各国で実施されており、本事業は、令和7年度の案件として外務省より採択されました。
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