H21年度聖マリア病院群初期臨床プログラム「国際保健コース」研修

2010年2月11日から20日までラオスの活動地域において、聖マリア病院群初期臨床研修プログラム「国際保健コース」国際保健コースのフィールド研修の受け入れを行いました。今回の参加者は4名で引率は聖マリア病院の浦部先生でした。参加者のうち3名の方から報告をいただきましたので、以下掲載致します。

坂井淳彦

私は平成22年2月11日から約10日間国際保健事業の研修でラオス人民民主共和国へ行ってきました。ラオスは東南アジア最貧民国といわれ、様々な国の団体が援助を行っています。私たちの研修内容はラオス国における乳児の栄養状態について(主にVit.B1欠乏)の調査を行い、その対策を立てるというものでした。 私たちが調査を開始してまず感じたことは保健事業を行うこと自体の大変さでした。調査対象となったトゥン村では道は舗装されておらず、家は掘立小屋のようなものでした。雨期には道は水没し移動手段はなくなり、家は雨風をしのげないことが考えられました。また、乳児の栄養状態についてはISAPHが2006年から行っている活動によりVit.B1欠乏は改善傾向にあるようでしたが依然として栄養障害は認められ、子どもたちの発育状態は不良でした。もともと食べ物自体が少ない上に、授乳婦における食物タブー(食べ物の種類を制限すること)や、乳児に早くからもち米を食べさせるなどの誤った食育といった古くからの慣習が乳児の栄養障害に拍車をかけていました。日本では考えられないような状況がそこには広がっていました。衛生面の改善やインフラの整備、村人たちへの教育も含め開発途上国における保健事業の大切さと、それを行う大変さを体感しました。その中で保健事業活動を進め、その成果が出た時の達成感もまた図り知れないものだろうと感じました。  仕事以外にはメコン川の広大さに感激しつつビアラーオ(ラオス国のビール)を飲んだり、現地の方の結婚式に出席させていただいたりと貴重な体験をすることができました。また、ラオスに入国数日後には下痢に襲われビアラーオをORS(経口補水塩)に持ち替え脱水に対処するというこれもまた貴重な体験をすることができました。 いろいろなことがありましたがとても勉強になり刺激を受けた研修でした。このような機会を与えていただいたことを大変感謝しております。どうもありがとうございました。

古田芳彦

ラオス人民民主共和国は東南アジア、メコン川の東側に位置する国です。2月11日から2月20日まで、国際保健コースの研修として研修医4人と引率の国際事業部浦部医師でラオスへ行きました。福岡空港を出発し、バンコク経由でラオスの首都ヴィエンチャンに到着しました。ここから車で約5時間、ISAPHの事務所が置かれているタケクというラオス中部の町へ移動し、ここを拠点として活動しました。 テーマとして麻疹の予防接種と乳幼児の脚気を選び、県・郡の病院・保健所やISAPHの活動地域である村で聞き取り調査を行いました。私は予防接種の状況について聞き取りをしましたが、訪問した家庭はどこもしっかりと子供に予防接種を受けさせており、麻疹に関する知識もあるようでした。ISAPHの活動の成果と思われますが、活動地域外、特に僻地の接種率はまだまだ低いとのこと。道路が未整備なため、ワクチンを冷蔵したまま輸送することも容易ではないのです。 最終日はヴィエンチャンにあるマホソット病院を見学しました。ここは国内で最高水準の病院で、1台のみですがCTも設置されており、医療水準・設備は整っていました。死亡退院で多いのが交通事故とのことでしたが、この国では子供がノーヘルでバイクを運転したり、4人乗りをしたりなどと交通ルールが存在していないのと同様の状況で、私たちも滞在中に2件の交通事故現場に遭遇しました。救急搬送体制も未整備であり、今後大きな問題になってくる可能性があるだろうと感じました。 ラオスは貧しい中でも高度成長中で、町の中には高級車も含め多くの車が走り、携帯電話が普及するなど新しいものがどんどん流入していました。その一方で衛生や栄養状況の悪さで未だに多くの人々が命を落としているという現状で、アンバランスさを感じました。トイレには紙も蛇口もなく(貯めてある水を手桶ですくって流す)、私たちはずっと下痢に悩まされました。このような現状は、直接この目で見なければなかなか理解できず、国際協力も困難であろうと思われました。ラオスに溶け込んで活動をされていたISAPHの皆さんの姿は大変印象的でした。大変お世話になりました。

渡邉元己

浦部大策先生含め、2年次研修医4人で2月11日~20日まで国際保健コースの一環としてラオスに行って来ました。非常に勉強となる研修でしたので報告いたします。私たちは2人ずつ2チームに分かれ、それぞれ『麻疹の予防接種』・『ビタミンB1に関連した栄養』をテーマに調査を行いました。現地の気候は日本での初夏のようであり、過ごしやすく、調査もスムーズに進みました。具体的な活動内容としては、現地で活動をされているISAPHの方々とともに県保健局・郡病院などを見学し、ラオスの保健医療を学ぶとともに、実際に村へ行き村人へインタビュー調査を行いました。また、市場見学など現地の住民の生活を直に感じる機会もあり、動物市場など刺激的なものも体験出来ました。様々な事を学んだ研修であり、4人とも激しい下痢に襲われたときのORS(Oral Rehydration Solution)の有用性を実感させられました。調査だけでなくラオス料理や、現地の慣習も堪能しました。調査後の夕日が沈むメコン川を眺めながらのLao Beerは最高でした。帰国後は、調査内容をもとに現状の改善を目指す活動計画を作成しました。 今回の経験はこれからの人生で糧となるものでした。このような機会を与えてくれた浦部先生始め聖マリア病院、調査に協力して頂いたISAPHへお礼を申し上げます。

後列向かって左後ろより坂井淳彦氏、渡邉氏、左前

古田氏、右端より浦部先生、坂井英生氏、中央4名ISAPH職員及び関係者

ISAPH 事務局