聖マリア病院第3回ラオス国スタディ・ツアー

昨年度に引き続き、第3回聖マリア病院のラオス国スタディツアーの受け入れを2009年11月3日~8日の5日間で行いました。今回のツアーの参加者はマリアの職員の方4名で、引率は聖マリア病院の浦部先生でした。以下参加された方の感想をご報告いたします。

作業療法士/佐藤 利幸

平成21年11月3日から8日の5泊6日スタディー・ツアーでラオス人民民主共和国(以下、ラオス)へ看護師2名、介護福祉士1名、作業療法士1名の計4名で参加させて頂きました。ラオスは、東南アジアの内陸国でメコン川を挟んでタイと国境を隣接しています。人口約500万人、100以上の民族からなる多民族国家であり、言語、文化、習慣がそれぞれ違います。国土の多くが山岳で占められており、土壌は赤土が多く、雨季には洪水が多いなどの理由から高床式住居がほとんどでした。

今回のツアーで特定非営利活動法人ISAPHの活動を見学させて頂きました。主とする活動内容は、妊産婦・乳幼児健診による健康管理などで、その他には頻回に手洗いや入浴を実施する保清習慣がない住民へ、井戸の設置や管理支援、手洗いの指導や、飲水は沸かす指導、トイレ建設支援を行なっていました。

医療制度は日本とは随分違い、病院で診療を受ける場合の料金は前払いで、薬、注射器なども病院に在庫が無い場合には処方箋を持って院外にある薬局へ買いに行かなくてはなりません。また、入院しても患者さんに食事は無く、日本のような看護をしてもらえるわけではないので、家族の誰かが付き添うことが要求されます。医療保険制度はありますが、会社単位で積み立てをしている人しか加入できず、一般市民への制度の整備が遅れています。このため、現金収入の少ない農村に暮らす人などの医療費は全額個人負担になります。

また、ラオスでは病院で亡くなると寺に入れないという風習がいまだ守られており、重症患者や、治療が長引きそうな患者は家に帰すことが当たり前と言う状況には驚きました。日本では考えられない事だと思いました。

この度ラオス・スタディーツアーに参加させていただき“当たり前”の日常は“有難う”と感謝の日々だということに気づかされました。引率して下さった浦部先生をはじめ御尽力頂いた各関係者の方々に深く感謝致します。

看護師(ICU・CCU)/福田 千恵

今回のスタディーツアーに参加し、ラオスの保健医療を実際に見学したが、都市部と地方の格差はあるものの、国際協力の根気強い働きかけが実を結んでいることも大きいと感じました。ISAPHの現地スタッフである岩田さんからは、子供が死んで行くのを見るのが怖いからと、親は弱った子を置いて家を空けるのだという話を聞きました。そういった人々の意識を変えていくのは難しいと話し、その土地の文化や習慣に合わせて活動していくことの難しさを学びました。ラオスは日本だけでなく、他の諸外国の支援もあり様々な取り組みがなされていますが、その期間や財源も限られており、私達が医療の立場から出来る事は何かという事をじっくり相手の立場に立ち考えていかなければ自己満足にすぎません。それは考えれば看護全般に通じることでもあると気付きました。

また、岩田さんの言葉で印象に残ったのが、「誰かがやらなきゃ」という情熱をもった言葉でした。今回のスタディーツアーでは問題を解決していく力を身につけ、駆使する、そしてそれを動かす原動力となるのは人の心であるという事を学びました。とても充実した、貴重な経験をさせていただき、病院長始め、忙しい中、通訳までしていただいた岩田さん、現地のスタッフの皆様、本当にありがとうございました。

看護師(救急室)/新谷 瞳

ラオスの状況は、市内と村とでは全く違っていた。市内の人々は、日本で私たちが生活しているのとほとんど変わらないような家に住み、高級車を運転している。一方村の人々は、壁もない様な家に住み、自給自足の生活。私たちが食事をしていると、物乞いをする子ども、老人までもいた。これほどまでに貧富の差があるのかと、とてもショックを受けた。今まで、何の不自由もなく生活してきた自分を恥ずかしく思うと同時に、これまで私を支えてくれた家族、友人に感謝の思いがこみ上げてきた。

また、私がラオスの医療で一番驚いたことは、医師が処方箋を書き、患者またはその家族が薬局で薬を買い、医師、看護師のところへ持ってきて初めて点滴等の治療が開始される、ということだ。すなわち、お金を持っている人が治療を受けることができる、というシステムである。そのため、地方の救急室には常備薬が鎮痛剤等しかおかれていなかった。病院側も経営を成り立たせなければいけないとの由だったが、日本では考えられない現実を目の前にし、人の命までもがお金に左右されてしまうのかと、とても悲しい思いをしたのと同時に、全ての人に平等に医療を提供できないかととても考えさせられた。

このスタディツアーを経験し、看護師として考えさせられること、学んだことがとても多くあり、自分の人生観、価値観がとても変わったと思う。今回のラオスでの学び、経験を忘れず、看護師として生きていく中で生かしていきたいと思う。

介護福祉士/井上 智之

介護の担い手としては家族が主であり専門性を持ったスタッフはいなかったし、社会制度的にも介護福祉士という職業自体が活動し得る状況にいたるまではまだまだ時間が必要と感じた。しかしながら現地を訪れ実際に眼にすることで私自身得ることは大きかった。

ISAPHの活動状況を視察した際、村人が活動に対しての意見として「私たちは身なりはまだ汚く、衛生的ではない。食器等も自由に洗える環境にもない(井戸も引けていない)。私たちは、貧しいけどできる範囲でがんばっている。」との言葉に公衆衛生、看護、介護に対する意識の高まりを感じ深い感銘を受けた。

しかし一方では村人の意識はまだまだ高いとは言えず、建物の構造や衛生状況からもそれを鑑みることが出来る。無論それには様々な理由(風土、伝統、慣習等)も存在するのかもしれないし、生活の面からもそうせざるを得ない部分もあるのだろう。

しかしながら、そうしたあらゆる面を考慮しつつ、よりよい介護形態を模索していくには、かれらの生活全般を深く理解したうえでのより細かい支援活動が必要であると感じた。

写真左上より新谷さん、佐藤さん、引率の浦部先生、

井上さん、左下より福田さん、ISAPHラオス岩田

ISAPH 事務局