ホームページをご覧のみなさまこんにちは。ISAPHの佐藤です。
みなさもご存じのとおり、ISAPHのメンバーは公衆衛生学や農学、栄養学などの専門性をもって活動しています。チームの特性から、どうしても定量的な指標を使って現地の問題を理解しようとする傾向が強いですが、人々の行動原理や新しい解決策を探るためには定性的な視点も欠かすことができません。そのような観点から、マラウイ事務所では長崎大学の佐藤美穂先生と連携して、2022年から共同研究を進めてきました。佐藤先生は、文化医療人類学を専門とされる国際経験豊かな専門家で、マラウイの周辺国であるザンビアやエチオピアで主に活躍されています。今回は、私たちが活動するマラウイ農村部に暮らす住民が、食物や栄養というものに対してどのような世界観を持っているのか、そんな「そもそも論」に目を向ける機会となりました。
研究の成果については、現在一生懸命論文を書いていますので、そちらを見ていただくこととして(笑)、今日は、この活動を通じて得られた現地とのパートナーシップについて少し紹介します。近年、研究の世界でも「外国人が途上国に行って情報を集め、自分たちだけの成果(論文)とすることは倫理に欠ける」という見方があるようです。すなわち、現地の研究者が現地の問題を研究して成果を残すことができるように、外国の研究者は配慮する必要があるということです。能力のある国や人が一人勝ちするような研究の在り方は、研究者としての倫理に反するということのようです。
なんとも国際協力に近い視点ではないでしょうか。持っている者がさらに得るのではなく、持たざる者と協力することでお互いに成長することができるのかもしれません。今や産業・ビジネスにおいても、外国を市場とみるだけでなく、ソーシャルビジネスのように社会課題のツールとしてビジネスを活用するという視点もあるようですから、色々な業界において「“自分のためだけ”という視点で行動することは適切ではないよね」という見方が強くなってきつつあるのかもしれません。
そのような観点からも、今回の研究ではムズズ大学の2名の研修者と連携して調査を実施することができました。私たちも佐藤美穂先生の専門性を通じて定性的な学びを深めることができましたが、きっとムズズ大学の先生方も同じ想いだったと思います。2025年2月に実施した報告会では、聴衆からの質問への対応で大活躍をしてくださったチランボ先生(写真②)。報告会後の食事会でも、これからもISAPHのプロジェクトを通じてフィールド研究で連携していくことを確認することができました。いつか将来、マラウイの研究者が「日本の文化を研究してみたい」という風になればいいな、と研究分野における国際協力にも思いを馳せるひとときとなりました。
ISAPH事務局 佐藤 優

写真① 研究報告会の様子

写真② チランボ先生の質疑応答

写真③ 集合写真

写真④ 昼食会にて