母子保健サービスの利用推進事業の進捗報告(郡病院、保健センター職員向けトレーニング実施報告)

こんにちは、ISAPHラオス事務所の安東です。私たちISAPHは、対象地域に暮らす住民たちが、必要な時に母子保健サービス(4回以上の妊婦健診、病院での安全な出産、産後24時間以内の健診、1歳までの定期予防接種)を途切れることなく、利用できるようになることをを活動目標の一つにしています。これまでサイブートン郡保健局管轄の3村とナノーイ保健センター管轄の5村において母子保健事業を展開し、母子保健サービス利用率の向上に努めてきました。お母さんたちに安全な出産をしてもらうためには、4回以上の妊婦健診の受療をすることや、病院での出産をしてもらうことに加え、医療従事者が妊婦の妊娠週数や出産予定日を正確に推計し、妊婦とその家族に指導することが大切です。

しかし、これまでの観察調査から、医療従事者が妊婦健診時に子宮底長を計測した後、“Pregnancy wheel”と呼ばれる道具から導き出される出産予定日を正しく判読できず、誤った妊娠週数と出産予定日を妊婦に指導していたことがわかりました。その結果、母子手帳に記載されていた予定日よりも3週間以上早く、正期産よりも前に出産を迎えたケースが全体の過半数を占めました。予定日よりも3週間以上早く陣痛を迎えた妊婦の多くが「予期せぬタイミングで陣痛を迎えたため、自宅から遠い田畑から家族が帰ってくることや交通手段の準備を待っている間に陣痛間隔が短くなり、自宅出産せざるを得なかった」と答えました。一方で、母子手帳に記載されていた予定日とのずれが少なく、妊娠週数37週以降に陣痛を迎えたケースでは、ほとんどの妊婦が病院で出産することができていました。

この件をカムアン県保健局およびサイブートン郡保健局と話し合い、改善が急務であることから、郡病院、保健センター職員向けの研修会を実施しました。研修会当日は、講師としてカムアン県保健学校の助産学の教員を招き、サイブートン郡病院職員9名と5か所の保健センターからそれぞれ1名ずつの合計、14名が参加しました(当初ISAPHは、活動対象村で働く職員だけを研修対象者に考えていましたが、嬉しいことに、ISAPHの活動対象村以外の保健センターの職員からも研修会に参加したいという要望があり、交通費や日当を払うことなく、参加してくれました)。各参加者は、妊娠週数および出産予定日を推計する方法、“Pregnancy wheel”を利用した妊娠週数および出産予定日の正しい判読方法、母子健康手帳を使った出産準備に関する妊婦・家族指導について学びました。講義と実習の時間を設けた前後で、正しい出産予定日の推計についての確認テストを実施したところ、正答率が17.9%から85.7%まで改善することができました。参加者には、練習問題を配布し、今回学んだ学習内容が記憶に定着し、妊婦健診で実践できるように配慮しました。

参加した職員からは、「“Pregnancy wheel”は郡病院・保健センターにあるけど、子宮底長の値から出産予定日を判読する方法は、学生時代から現在に至るまで学習指導を受けたことがなかったから、今回の研修会を通して自信を持って出産予定日を妊婦とその家族に指導できるようになった」という反応や「事後演習として配布された練習問題を使って、今回学んだ知識と技術を研修に参加しなかった職員に伝えたい」という発言がみられました。また、講師として招いた助産の教員からは、「今回の学習内容は、卒後教育だけではなく、学生のうちから“Pregnancy wheel”を正しく判読できるように学生指導に生かしていきたい」という意見を聞くことができました。

 

今後は、カウンターパートとともに、研修会の前後で、母子手帳に記載された出産予定日と実際の陣痛発来日との日数差が少なくなっていることや妊婦やその家族が出産予定日を正しく把握したことで、妊婦が4回以上の妊婦健診を受療できる割合や妊婦が希望通りに病院で出産するケースが増えているかモニタリング・分析して、今回の研修会が、妊婦健診受療率と施設分娩率の改善に効果があったのかを測定していく予定です。

ISAPHラオス 安東 久雄

講義の様子

ノートに書き留める様子

pregnancy wheel

グループワーク①

グループワーク②