ラオスにおける第2回マラリア調査

東京女子医科大学、ラオス中央マラリア・寄生虫センター、ISAPH LAOSによる第2回目のマラリア共同調査が行われました。まず、ボラパー郡について簡単に説明します。ボラパー郡はカムアン県の南東部に位置し、その東にはベトナム国境を有する山岳地域の貧困郡です(貧困郡の定義は、85,000kip/月/人=米16㎏/月/人以下で生活している村が51%以上であること)。総人口は約2万2千人(82村、約3,800家族)で、全国的には少数派である中地ラオ族が多くベトナム民族が見られるのも特徴的です。カムアン県保健局からの強い要請もあり、ISAPH LAOSの活動対象地域とすることが合意されています。

今回の調査概要は以下のとおりです。

期間平成17年3月25日~4月10日
対象地域カムアン県内のセバンファイ郡、ニューマ ラート郡、ボラパー郡
参加者ラオス側の中央マラリアセンターからフィールド調査への参加者は、JICA留学生ボアラム氏を含めて4名、
県保健局から2名、各郡保健局からそれぞれ1名で、日本側は東京女子医科大学から江藤助教授、櫻井助手の2名、
ISAPH LAOSからは齋藤(賢)、およびISAPHラオスタッフのタダム氏が参加した。
内容第1回目の調査を踏まえた薬剤浸透蚊帳の有効性評価
簡易診断キットやギムザ染色法による陽性患者の検出(ACD:Active Case Detection)及び治療、
また世帯主や母親への質問紙(インタビュー)によるマラリアに関するKAP(KAP:Knowledge Attitude Practice)調査を行った。

前回の調査では、3郡の調査地域で陽性患者が見られず、マラリアの激減が示唆されました。今回も、同じ調査地域では殆どマラリア患者は見られず、乾期・雨期を通じて同地域(セバンファイ郡の2村、ニューマラート・ボラパー郡の郡都周辺)では確実にマラリアが激減しているようです。しかし、今回新たに活動対象としたボラパー郡の奥地ノンマー・クンセー地区の少なくとも3 村(郡庁からの規制によって、自由に村を選べなかったのです)では、検査対象者合計212人中10人(4.7%)のマラリア陽性患者が見られました。陽性患者は10歳未満と思われる小児であり、その家では蚊帳は使っていませんでした。このような辺境の地区では、裸同然で生活している子供たちも多く、いろいろな理由から蚊帳が使われないこともしばしばあり、雨期にはマラリアの流行が懸念されます。裸同然で生活している子供たちも多く、いろいろな理由から蚊帳を使っていない家もあり、雨期にはこのような地区でのマラリア流行が懸念されます。郡都からのアクセスが困難な地域で、疾病予防の知識が乏しい、経済的困難に直面しているなどの人々は、マラリア対策などからも取り残されています。また、同じ村落内といえども決して均質ではなく、家屋毎の置かれている状況はさまざまです。聖マリア病院を母体とするISAPHとしては、弱者に寄り添いキメの細かい活動で、このような現実に対峙することが大切だと強く感じました。

ISAPH LAOS 齋藤 賢之