2019年度 寄付金による支援の報告

ISAPHは皆様からいただいた寄付金による支援をラオスやマラウイの活動地域で行っております。昨年度は、母乳育児が困難な貧困家庭への粉ミルク支援の他に、ボランティアが使用する教材(レシピ本)の作成、マラウイでは5歳未満児の急性低栄養(消耗児)の栄養補助プログラム(SFP/ Supplementary Feeding Program)に使用させていただきました。2019年度に行った寄付金による支援の一部をご報告いたします。

ラオスにおける粉ミルク支援:Mr. パラミー

当該両親は結婚時の借金があり、借金返済のために父親は児の出生前よりビエンチャンへ出稼ぎに行っていました。母親は出産・育児のため村に残りましたが、児が月齢7カ月の時点で母親も祖母に児を預けて出稼ぎに行きました。両親は、子どもの粉ミルクのために祖母へ仕送りをする予定でしたが仕送りがなかったため、母親が出稼ぎに行ってからはコンデンスミルクを水で薄めていたものを与えられていました。その後、仕送りがありましたが、仕送りがなかった間のコンデンスミルクの立て替え購入分の返済や生活費、児の離乳食代などに充てられ、粉ミルクの購入の余裕がないためにコンデンスミルクしか購入できないと祖母から訴えがあり、コンデンスミルクを購入する代金を粉ミルク購入代金に充ててもらい、不足分の粉ミルクを支援する方針を決定しました。 支援は粉ミルク2箱と家族で2箱を用意する予定でしたが、児はミルクよりも離乳食をよく食べると言っており、毎月支援分と合わせて家族購入分は1箱の合計3箱で足りているとのことでした。緩やかではありますが、児なりの成長発達を維持できており、満一歳となる2019年10月をもって支援を終了しました。
支援時の様子

ラオス住民ボランティアの教材作成

ISAPHでは、2017年度より「食生活改善推進員(VNV: Village Nutrition Volunteer)育成事業」を行っています。本事業では、ISAPHの母子保健プロジェクトの対象村で食事・栄養リーダーとなるVNVを育成しています。VNVの育成研修はISAPHの対象3村から各3~4名の希望者を募り、本年度も2期生が研修を修了し、合計20名余りのVNVが誕生しています。

VNV研修では、栄養に関する講義に加えて調理実習を行っています。研修の最終回に実習で調理したレシピをまとめたレシピ本を研修生に配布しました。レシピ本は、研修生が研修で学んだ栄養の知識とバランスよく食材を使った料理が復習でき、食事・栄養リーダーとして地域の他の住人に助言等をする際にも活用できる有用な教材と考えられるため、教材(レシピ本)作成の支援をすることを決定しました。

栄養ボランティア育成の講義の様子

マラウイ栄養補助プログラム(SFP)支援:Ms.グレース カコタ

当該プログラムはマラウイ国が実施しているものであり、急性の低栄養状態に陥った児への治療として補助栄養食の配布を行うものです。ISAPHの活動地域であるマラウイ国ムジンバ県マニャムラヘルスセンターにおいては、補助栄養食が在庫切れを起こしていることが問題となっていました。

ISAPHでは、児の低栄養状態の悪化を防ぐため、また栄養教育を目的として、ムジンバサウス県保健局との協働のもとマニャムラニヘルスセンターに対して栄養補助食の支援を実施しました。2019年11月22日に当該支援を伴う初のSFPが実施され、以後、2020年3月13日までに計17回のSFPが実施され、合計74名の対象児に対して累計268回 3,752食分の配布支援を実施しました。今回は、そのうち1名の事例をご紹介いたします。

児の出生体重は2.4kgでしたが、出産直後より母乳が出ず、すぐにNRU(Nutrition Rehabilitation Unit:栄養リハビリテーション室)へ入院となりました。NRUでは1カ月半治療用のミルクを与え、その後退院となりましたが、病院から粉ミルクの配布はなく、家庭で粉ミルクを購入し2カ月与えました。生後3カ月頃より母乳が少しずつ出始めたので粉ミルクの購入を止めましたが、依然児の体重は3カ月半で3.9kgでした。乳幼児健診時、HSA(Health Surveillance Assistant)と相談し、母親の母乳が十分でない事からSFPへ登録し支援開始となりました。支援開始時、児の体重は4.5kgでしたが支援終了時5.5kgまで改善しました。

支援開始時

支援終了後

SFPの様子

体重計測

身長計測

上腕周径計測(MUAC)

問診

アセスメント

ISAPH 事務局