地域と協力して卵の生産を目指す

ISAPHマラウイの活動は、JICA草の根技術協力プロジェクト「母と子の『最初の1000日』に配慮したコミュニティー栄養改善プロジェクト」を開始してから1年が経過しました。プロジェクトに先立って行われた昨年の調査では、5歳未満児の低栄養の現状や、その原因である家庭で食べられている食品の種類の少なさ、特に動物性タンパクが全く不足している状況が明らかになりました。住民の経済力に加え、食品の流通自体も不足している農村の暮らしでは、保健活動だけでは栄養状態は改善されない現実が浮き彫りになりました。2018年末より、活動地域では住民たちによるグループ菜園の活動をスタート。雨季にあたる12月~翌3月にかけて、タンパク源となる豆類などを栽培し、収穫に至りました。

続けて、2019年からはグループでの養鶏を開始しました。卵は豊富なタンパク質の他にもビタミンやミネラルが多く含まれ、非常に有用な栄養源です。同時に、売って現金収入にすることもできます。マラウイの農村に住む人々の所得は日本より遥かに低いものの、店頭で売られている鶏卵の価格は1個約12円と、日本と大差ありません。日常的に買って食べるには贅沢品なのです。これは食べる立場としては高い障害ですが、生産者の側からは非常に魅力的なビジネスでもあります。

グループ養鶏は、以前ISAPHがプロジェクトを展開していた近隣地域でも実施していました。そこで、その地域の中でも特に成功を収めたグループでインタビュービデオを撮影し、今回の活動地域で披露しました。ビデオの中で、苦労して得られた成果を誇らしく語る先人たちの姿に、自分たちにもできるかもしれないと、目標を見つけて目を輝かせていた人々の反応がとても印象的でした。

住民たちには、まず鶏舎の建設を指示し、並行して飼育方法を指導。鶏舎の完成を経て5月には、マラウイの農業試験場が作り出した改良品種のヒヨコを配布しました。今のところ生育は順調で、グループのメンバーたちは餌代の持ち寄りや、日々の飼育当番などを各自で話し合い工夫している様です。

アフリカで家畜や家禽を飼育することは、日本では考えられない問題にも多々直面します。例えば、日本では買いに行けば手に入る鶏の餌は、大豆やトウモロコシの粉末、小魚のくずなどを集めて自ら配合しなければなりません。必要な栄養素が不足すると生育に悪影響なだけでなく、簡単に病気になってしまいます。他には、野生動物に襲われるリスク。小屋に隙間があると、ヘビ、フクロウ、マングースなどの侵入を許し、それだけで全滅しかねません。鶏泥棒にも気をつけなければいけません。

今後も予期しないトラブルや出来事が起こるのではないかと予想しています。しかし、過去の事例から学び、目標に向かって住民たちと協力して取り組むのは、大変にやりがいを感じます。

 

◇養鶏に成功したグループのインタビュービデオは、YouTubeのISAPHチャンネルで観ることができます。

https://youtu.be/lXJuMpYrT_A

ISAPHマラウイ 山本 作真

配布したヒヨコから大きなニワトリに
育て上げたグループメンバー

飼育の最優秀グループが、
採れた卵と記念撮影