ラオス母子保健プロジェクトにおける寄生虫対策プロジェクトの一環で、2014年11月26~28日の3日間、名古屋公衆医学研究所との共催による寄生虫セミナーを開催しました。名古屋公衆医学研究所は寄生虫卵検査法である「加藤氏セロファン厚層塗抹法」(以下、「加藤氏法」)を開発した加藤博士が設立した研究所です。海外医療技術協力事業を行っており、以前にもラオスで寄生虫卵検査の技術指導の実績があります。またISAPHの活動地域も視察されたことがあり、そこでラオスでは依然、寄生虫感染が高率であることを目の当たりにし、感染予防も含めた寄生虫基礎知識の普及及び寄生虫卵検査法の指導の必要性を認識されたと共に、私共の活動に共感してくださり「寄生虫健康教育と寄生虫卵検査セミナー」を開催することになりました。
今回の寄生虫セミナーは、カムアン県内10郡の郡保健局職員及び郡病院臨床検査技師を対象にしたもので、地域住民の健康増進・疾病予防のため、感染予防も含めた寄生虫感染についての健康教育と寄生虫卵検査法の基本的な知識と技術を身につけることを目的としました。1日目は寄生虫感染についての講義と寄生虫卵検査の実演を行いました。講義ではラオスと日本における寄生虫感染について、主要な寄生虫の生活環等の説明を行いました。その後、寄生虫卵検査法の効率的、経済的な検査法である「加藤氏法」を紹介すると共に「Kato-Katz法」との比較も講義しました。「Kato-Katz法」とは「加藤氏法」にブラジルのKatzらが定量的な検査を行うためにいくつかの方法を加えた検査方法です。実際に寄生虫卵の症例スライドを見せながらの説明でしたので、参加者は理解しやすかったようです。また、翌日からの寄生虫卵検査実習に備えて、疑似便を用いた検査方法の実演を行いました。皆、真剣に手技の説明を聞いていました。2、3日目は各郡病院の臨床検査技師を対象に寄生虫卵検査実習を行いました。便検体はISAPHの活動地域の1つであるシーブンフアン地区ブンフアナー村の住民の皆様に提供して頂きました。まず「加藤氏法」を用いて実習を行い、次いで「Kato-Katz法」でも実習を行いました。参加者は経験年数や検査レベルも異なり、「加藤氏法」や「Kato-Katz法」を経験した事のある技師、あるいはそれらの経験がない技師もいましたが、参加者は全員臨床検査技師であるので慣れており、技術の呑み込みは早いように感じました。
3日間の寄生虫セミナーを通して参加者は熱心に取り組み、実習では検査技術に差はありましたが、全体として良い検査成績でした。今回の研修対象者である郡保健局職員及び郡病院臨床検査技師にとっては、普段このような研修会を受ける機会に恵まれないので、知識・技術の向上につながり貴重な経験になったのではないかと思います。そして、経済的事情から検査物品等を整えることは難しい施設もあると思いますが、ぜひ他の職員にもこのセミナーで学んだことを普及し広めてもらいたいです。
最後に、今回寄生虫セミナーを開催して頂いた名古屋公衆医学研究所の皆様に心から感謝申し上げます。
ISAPH LAOS 赤羽 由香
寄生虫感染・検査方法についての講義
寄生虫卵検査用標本作成の様子
熱心に鏡検を行う参加者たち