ラオス・カムアン県サイブートン郡全域を対象に地域母子保健事業を開始― 行動インサイト・ナッジを活用して望ましい健康行動を導く新たな取り組み ―

ISAPHは、ラオス人民民主共和国カムアン県サイブートン郡全65村(総人口約32,000人)を対象に、母子保健の向上を目的とした新規事業を開始しました。
本事業は、カムアン県保健局との了解覚書(MOU)締結に基づき、2029年までの3年間実施されます。

1.事業の概要

 本事業「サービス受益者の行動選択に働きかける誰ひとり取り残さない母子継続ケア支援事業」は、妊婦健診、施設分娩、産後健診、予防接種に至るまでの継続的ケアの利用促進を目的としています。
 対象地域はサイブートン郡の65村で、約10,000人以上の住民が裨益する見込みです。

 

2.行動インサイトとナッジの導入

 本事業の特徴は、「行動インサイトとナッジ」の活用です。
 行動インサイトとは、「人は必ずしも合理的に行動するわけではない」という前提に立ち、人々の習慣や心理、周囲の影響などを踏まえて行動を理解するアプローチです。
 またナッジとは、人々の選択の自由を尊重しながら、より良い行動を自然に選びやすくする“ちょっとした工夫”を指します。

 例えば、「周りの多くの人が病院で出産している」と伝えることや、健診の日程を分かりやすく示すことに加え、家族の中で妊産婦の行動に関する意思決定に関わる人(夫や両親など)と一緒にバースプランを立てることも、こうした工夫の一つです。これにより、本人だけでなく家族全体で出産や受診、予防接種といった行動を選択し易くし、実際の行動変容を後押しします。


 これまでの活動により、施設分娩率の改善などの成果が得られましたが、これらは主に、1つの保健センター管轄下の10村を対象としたパイロット的な取り組みにおけるものでした。本事業では、これまでの成果を踏まえ、対象地域を1つの郡病院および5つの保健センターが管轄する65村へと拡大します。こうした行動インサイトとナッジの考え方を活用しながら、地域の文化や生活習慣に合わせた形で行動変容を促し、取り残されがちな健康無関心層への支援をより広範囲に展開していくことを目指します。

健診日程や病院出産を促すリマインドカードを見る配偶者

義母と実母とともにバースプランを立案した妊婦

配偶者とともにバースプランを立案した妊婦

3.連携体制

 本事業は、ラオス保健省、県・郡保健局、コミュニティと連携しながら、計画、進捗管理、モニタリング・評価を行い、持続性を確保します。また、現場ではアウトリーチ活動や村レベルでの協働を通じて、地域住民に寄り添った保健サービスの強化を進めていきます。
 加えて、本事業は各分野の専門家と連携しながら実施します。ナッジ(行動経済学)の分野で豊富な知見を有する竹林専門家、保健行政における行動インサイトチームの立ち上げおよびナッジの実践に取り組んでいる髙橋専門家、そして調査研究および評価分析を担う菊池専門家の協力のもと、科学的知見と現場実践を融合させた形で事業を進めていきます。
 これにより、現場での実践だけでなく、エビデンスの創出や政策への展開も視野に入れた、より実効性の高い取り組みを目指します。

事業開始に先立ち、保健省大臣官房を表敬訪問

カムアン県保健局長ならびにカウンターパートと会合

カムアン県保健局とISAPHによるMOU調印式

サイブートン郡にてキックオフ会議を開催

4.今後の展望

 本事業を通じて、母子保健サービスの利用率のさらなる改善を図るとともに、得られた知見や成果をラオス国内の他地域へ展開していくことを目指しています。さらに、母子保健分野にとどまらず、非感染性疾患など他の保健分野への応用も視野に入れています。
 ISAPHは今後も、ラオスの現地パートナーに加え、日本のパートナーとも連携しながら、持続可能な保健医療の発展に貢献していきます。

産後1年6か月以内の母親に母子継続ケアの達成状況を聞き取り

ISAPH東京事務所 安東 久雄

※本事業はJICA草の根技術協力事業(パートナー型)としてISAPHがJICAから委託を受けて実施します。

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