こんにちは、ISAPHラオス事務所の安東です。
私たちの活動目標は対象地域に暮らす住民が、ラオス保健行政が提供する母子保健サービスの意味を理解し、必要なときに母子保健サービスが利用できるようになることです。各村には村落保健委員会(村長、保健ボランティア、女性同盟メンバー)と呼ばれる住民組織が存在し、住民への保健教育や母子保健サービスの情報提供、健康的な暮らしのロールモデルとなるなどの役割を期待されています。しかし、ISAPHが支援している対象村では、村落保健委員会の間で、村が抱える健康課題や課題解決のために果たすべき自身の役割への理解および協力ために必要な技術・知識が不足していることが課題として挙がりました。そこで、ISAPHは県保健局および郡保健局と連携・協働して、母子保健サービスの利用促進のために村落保健委員会の各メンバーの能力強化を図ることにしました。その最初の研修会として、子どもの成長モニタリングと栄養状態のアセスメントをテーマに各村で2日間のトレーニングを実施しましたので、そのご報告を致します。
ISAPHのプロジェクトスタッフであるビライワン職員が中心となって研修会企画の草案を練り、WHOやユニセフが発行しているガイドラインを参考にしながら、トレーニングで使用する視聴覚教材を作りました。また、研修会前日には、カムアン県保健局母子保健課のスーマリチャン医師、サイブートン郡保健局のニポップ看護師、ナノーイ保健センター長のスーカントン助産師と一緒に教育指導案の最終確認を行い、当日の役割分担をしました。トレーニング当日は受講対象となっていた村落保健委員会のメンバーの30人の内、27人が出席(出席率=90.0%)してくれました。導入の話として、村の中に低栄養の子どもが何人いるのか、一度低栄養になると通常の成長曲線に戻ることが難しいこと、子どもの低栄養がその後の脳・神経系の発達にネガティブに影響する可能性について説明しました。また、子どもの成長を定期的にモニタリングすることで、低栄養の兆候に早く気づき、対処方法を一緒に考えることができることを理解してもらい、学習のモチベーションを上げました。その上で、子どもの身長や体重、MuAC(上腕周囲径)の測り方と計測結果を母子保健手帳への記録、成長曲線のアセスメントの仕方について、講義、実技、ロールプレイ、グループディスカッションを交えながら、知識と技術、そして低栄養の子どもを持つお母さんへの声かけの仕方などを学びました。
最終日には各村で最低1人は正確に身長、体重、MuACを正確に測れるようになりました。また理解を確認する目的で実施したテストでは、事前と事後を比較して、平均得点が約12ポイント上がりました。参加した村落保健委員会のメンバーからは、「成長モニタリングの重要性がわかった」や「次の成長モニタリングの時には積極的に手伝いたい」という感想を聞くことができました。
研修会から2週間後のアウトリーチ活動支援での成長モニタリングの際には、村落保健委員会の各メンバーが積極的に協力する姿勢がみられました。村落保健委員会の保健リーダーとしての自覚が芽生え、村が抱える健康課題や課題解決のために果たすべき自身の役割への理解が深まり、積極的な行動へと変わったと評価しています。その一方で、村落保健員会が果たす役割は成長モニタリングへの協力だけではありません。自身の村の中の妊婦がしっかりと妊婦健診受けることができているか、病院での出産に向けて準備ができているか、村落保健委員会として支援できることがないかを考えてもらうために第2回目の研修会を企画しているところです。今後も村落保健委員会のメンバーと郡保健局職員が一丸となって、みんなで村人の健康を守っていく、必要な時に母子保健サービスを利用するという機運の醸成に貢献していきたいと思います。
ISAPHラオス 安東 久雄
VHCトレーニングの講義の様子
身長体重測定後の成長曲線のアセスメントの様子
体重測定の実技指導
VHCトレーニング修了後の集合写真