8月13日にJICAラオス事務所で開催された日本ラオス研究会に参加してまいりました。 この研究会は、ラオス研究者同士の情報交換の場、議論の場として2011年に発足し、第4回大会となる今回はラオスでの開催ということもあり参加者60名という大規模な会となりました。参加者は研究者や援助関係者、ラオスに魅せられて長期滞在している方など多岐にわたり、計7名のラオスの様々な分野に精通している方々からの発表がありました。
発表者のトップバッターとして、我らがISAPH理事の浦部大策先生より、ISAPHが過去10年間にわたり実施した「カムアン県・セバンファイ郡における母子保健プロジェクトの成果」についての発表がありました。ISAPHはセバンファイ郡の3地区で、母親と5歳未満児を対象に母子保健活動を実施してきましたが、対象地域において高い乳幼児死亡率と低体重児の多さが大きな問題となっていました。浦部先生は、その大きな原因として感染症と栄養不良があり、この2つが密接に関係しあって死亡率を増加させていたと述べておられました。
これらの問題に取り組んだISAPHの活動の結果、対象地区での低体重児の減少がみられ、ビタミンB1欠乏症が原因だと推測される乳児死亡は2013年以降ゼロになりました。ラオスの特に農村部では、栄養バランスの悪い食習慣や健康に関する圧倒的な知識不足が問題でしたが、地道な健康教育を通じて、家族の命を守り、健康的な生活を送るためにはどうすればいいかを粘り強く伝え続け、それが活動の成果として実を結んだのだと感じました。
研究会では浦部先生の発表の他にも、日本で縫製関係の勉強をした後、ラオスに魅せられ、10年以上もの間精霊を崇拝する村でボランティアとして織物に関連する活動をしている方や、ラオスの伝統楽器ケーンの伴奏者として現在もラオス南部で活動されている方など多岐にわたる分野のスペシャリストの方からの発表がありました。この会を通してラオスに関わっている日本人の層の厚さを実感するとともに、ラオスの伝統文化の奥深さを垣間見た気がしました。
「継続は力なり」とはよく言いますが、特定の分野の活動を突き詰めて長年にわたり追求し続けていくことで、ほかの誰にも真似できないような独自性のある知識・経験を積み上げることができ、他者からの尊敬を得ることができるのだということを再認識させられた研究会でした。
私たちの活動はサイブートン郡での母子保健活動ですが、ISAPHとしてセバンファイ郡で10年間培ってきた知識や経験を基盤とし、特定の地域でじっくり腰を据えて行うからこそできるきめの細かい援助、そして現地の草の根レベルの真の課題やニーズに取り組む活動ができるよう、切磋琢磨していきたいと思っています。