ISAPHラオス事務所での勤務を終えて

待つ医療から、訪ねる医療活動を経験して

2011年12月末で、3年8ヶ月にわたるISAPHラオス事務所の勤務を終了いたしました。

派遣された2008年4月前までは、ラオスの首都近郊にある総合病院で看護管理や看護技術に関する支援活動をしていました。そこでは時々地方から、もう手遅れであるような重態の患者さんが運び込まれてくることもあり、「何故もっと早く来てくれなかったのか」と思っていました。しかし、ISAPHのメイン活動である巡回診療で農村を回りだしてから初めてラオスにおける地方の現状というものを知った気がします。

まず、経済。ラオス国民のほとんどは農業に従事していますが、それはほとんど自給自足の為のもので、利益を得るほどの農家は余りありません。つまり現金収入がないのです。 医療保険制度も整っていないため地方の農民は現金で医療を受けることが大変難しいのです。

次にインフラ。病院のある場所は限られており、ほとんどは大きな道路近くにあります。 しかし、農村住民は舗装のない道を何kmも奥に入ったところに住んでいて、交通の手段は主に徒歩やバイクです。雨季には泥がぬかるみ歩行さえ困難なのです。 電気や水道、トイレが完備されているところは、県庁所在地以外ではあまりありません こういった状況では、病院にすぐにこれないし、農業を休んで病人を看病するのも大変なのです。

教育についても農村においては学校数が限られ、教師の確保も大変です。子供は農業や子守を手伝うため、中学校以上の教育を受けるのが難しい状況です。 このため、保健医療や衛生に関する知識を正しく受け入れてもらうことがなかなか出来ません。 文字が読めない人もあり、パンフレットを配布しても内容を理解できない人もいます。さらに、昔からラオスに伝わる習慣を守る風潮もあり、健康に良くないとわかっていてもやめられないこともあるのです。 医療のほかにも多くの要素が絡み合い、地方住民の健康保持、増進はまだまだ茨の道のりです。

一人でも死ななくてすむ人を死なせたくない。一人でも多くの人が病気で苦しむことなく生きてほしいと願い、ISAPH職員、日本人専門家の皆さんや他団体の協力を得て、ラオス側の皆さんと共に頑張ってきました。 この数年間で5歳未満の乳幼児死亡者の減少が見られたことは本当にうれしかったです。 病院で待っているだけでは、ラオスの地方で医療を必要としている人々に直接届かないということや、病気にならないような健康づくりを、お金をかけない健康教育という形の医療サービスで提供することの重要性をここで学びました。

ISAPHを離れますが、私はこれからもラオスの皆さんのお役に立てることをして行きたいと思っております。

長い間、ご支援やご指導を頂き、まことにありがとうございました。 心より厚く御礼を申し上げます。

ISAPH LAOS 岩田 和子

粉ミルク支援を受け大きくなったチェーンとペーン。