H23年度聖マリア病院群初期臨床プログラム「国際保健コース」研修

2011年12月10日(土)から17日(土)までラオスの活動地域において、聖マリア病院群初期臨床研修プログラム「国際保健コース」国際保健コースのフィールド研修の受け入れを行いました。今回の参加者は3名で引率は聖マリア病院の浦部先生でした。参加者の方から報告をいただきましたので、以下掲載致します。

ISAPH 事務局

臨床研修医「国際保健コース」ラオス研修に参加して

今回、私は途上国が好きであること、今後内科医として臨床研究や地域医療を行う時に、患者を個々人ではなく集団として考える姿勢が必要とされることなどから、国際保健コースを選択しました。

ラオス渡航前にはまずは英会話、そして文章構成の考え方や計画立案のためのProject Cycle Managementの手法など、海外支援を行う際に必要なロジックを学びました。

ラオスでは周辺のタイ、ベトナムなどとはまた違った、素朴なアジアの光景が広がっていました。我々が研修している聖マリア病院グループのNPO法人であるISAPHは、2005年よりラオス国カムワン県において母子保健プロジェクトを行っており、特にVitB1欠乏症による乳児死亡の減少などで成果を上げてきています。実際我々が訪問した集落でも健康衛生教育の効果を目の当たりにすることになりました。

ただ同時に、貧困、教育水準の低さ、住民の認識の甘さ、地理的限界など、途上国特有の打開することの難しい問題点が数多く存在することも痛感しました。しかしそのような問題が存在する上でプロジェクトを遂行するために必要なのが正確なロジック、科学性であり、それこそが公衆衛生、海外支援の醍醐味であるとも感じました。

現在世界では多くの途上国で様々な組織がいろんな立場で支援を行っていますが、ISAPHの活動を見て、そのようなプロセスを経た支援を行っている組織はそう多くはないのでは、という疑問すら抱きました。

私は来年度からは脳血管内科医として勤務することが決まっており、しばらくは目の前の患者を診ることで精一杯になると思いますが、全体を俯瞰し、患者を集団として観察することができる段階になった時に、今回の研修で学んだことを思い出そうと思います。

最後に、このような貴重な機会を頂き、浦部先生をはじめ聖マリア病院の先生方、ISAPHの職員の方々には心より御礼申し上げます。

三浦聖史

防ぎうる病気で命を落とす子供が一人でも減りますように

国際保健コースで学んだこと

今回、私は聖マリア病院「国際保健コース」の一環でラオスにおけるISAPHのスタディツアーに参加させていただきました。私はラオスに行くのは初めてでしたが、空港周辺にはビルがありラオスに到着した時、意外と都会だなという印象を受けました。しかし、車で20分ほど走ると雰囲気が全く変わり、砂ぼこりの舞う道、道路を横切る牛、質素な家という様子に、自分がいる場所は開発途上国ラオスなのだと再認識させられました。

そして、私達が宿泊していたタケク(首都ビエンチャンから車で5時間)からさらに車で1時間程走ったところに活動地域の村がありました。村の周囲は当然、道路の舗装などなく、家もかなり質素でした。また家畜と人間が生活環境を共有しているため、豚や犬や鶏が村を歩き回り、村の中は糞だらけという状況で、日本では見たことのない様子に私は大変驚きました。

私は今回ラオスを訪れる前に、5歳未満の児童における栄養問題と寄生虫の関連について調べていました。スタディツアーでは、村人の生活を視察し、寄生虫の認識を調査することが目的だったので、5歳未満の子供を持つ村人の家を訪れ母親から話を聞いて回りました。私が訪れた村は最初手洗いの習慣さえなかった村ですが、今回訪れてみると、ISAPHの活動の成果もあり、手洗いは当然、食習慣において魚を生食しないなど寄生虫対策を行っており、衛生教育の重要性を改めて感じました。しかし、水の煮沸が徹底できていないこと、使用している井戸が浅井戸と不衛生であり、生活環境が整っていないことなど、様々な問題点を認め、今後もISAPHのような援助活動の必要性を感じました。

最後に、私は子供が大変好きなので、子供の様子をみる機会が多かったのですが、村の子供達は非常に明るく笑っていました。しかし、ラオスにおける5歳未満の低体重児の割合は40%と言われています。一人でも多くの子供が笑っていられるように今後も何らかの形で国際保健に携わっていきたいと思いました。

日野知仁

カンペータイ地区ケンペー村で食べ物と栄養について学ぶ子供たち

ラオス国スタディツアーを終えて

今回、国際保健研修の一環としてラオスでの実地研修に行って参りました。内容としては、事前にラオスの現状と国際保健活動を行うにあたっての公衆衛生的介入法を学び、現地で実際の保健医療情勢を確認したのちにプロジェクト立案を行うというものです。

ラオスはベトナム、中国、ミャンマー、タイ、カンボジアの5カ国に囲まれた東南アジア唯一の内陸国です。周辺国と比べても経済的に恵まれず東南アジア最貧国の一つであり、保健医療分野においても多くの問題を抱えています。こうした実態を踏まえ、我々もいくつかのテーマを持って研修を行いました。

今回私はISAPHが活動しているカムアン県セバンファイ郡において栄養問題に関する調査を行いました。ラオスの5歳未満児死亡率は出生1000人あたり59人と日本の約12倍と高率です。その死因の半数を下痢症や呼吸器感染症が占めていますが、これには5歳未満の栄養不良児の割合が40%と高いことが背景として深く関与しています。つまり健康体を得るために、栄養状態を良好に保つことは必要不可欠なのです。しかし、一口に栄養問題と言っても、そこには食糧不足・食習慣の問題・衛生面の問題などさまざまな要素を含んでいます。

これを受け、ISAPHは2005年から同郡において郡保健局や各村長らと共に、巡回診療や栄養・衛生についての健康教育、井戸の設置活動等の活動を行ってきました。この活動は着実に実を結びつつあり、同地域の乳幼児死亡率は減少に向かっています。今回調査を行った村の各家庭においても、食習慣や衛生行動の改善が認められ、その効果がうかがわれました。

今回、実際に現地に行くことで、手段・言語・習慣を始めとし様々な問題がある事が分かりました。そういう意味でも非常に有意義な研修であり、機会があれば是非国際協力の現場に出たいと思いました。スタディツアーに関わって頂いた全ての方に感謝致します。

樋口淳也

実際の聞き取り調査風景