私たちは、サイブートン郡での母子保健活動を通して、乳幼児の発育状況のモニタリングや健康教育、 施設分娩の推進などの支援をしてきました。
健康について知ることが住民の行動を変える要因であることは間違いありませんが、それに加えて、現金収入の不足(経済的な問題)が、母子保健の向上を阻害する大きな要因であることが分かりました。
たとえば、緊急時に交通費が払えないため病院に行けないことや、子どもの病気に対する薬を買うことができないなどがあります。健康教育などで知識を得ることができたとしても、お金がないという理由から実行できない場合があります。
私たちが支援する村の中に、過去に他団体が設立した基金(リボルビングファンド)が乱立した状態で機能せずに残っていることが判明しました。そこで住民と話し合いを重ね、借りたままになっている負債を回収し、それを原資として、新しく基金を設立することになりました。
私たちは、住民と何度もミーティングやワークショップを実施し、新しい基金をどのように運営していくか話し合いました。その結果、基金の主な対象として、女性への融資を優先することになりました。そして、基金の名前を「家族開発基金」としました。
「なぜ女性なのでしょうか?」
対象地域の世帯は、女性が一家の家計を管理しています。また一般的に、女性は家族の健康・教育への支出を重視する傾向にあるため、女性が基金を利用することで、私たちの願いである母親や子どもの健康に繋がることが期待されます。
■「緊急搬送基金」とは?
住民が緊急時に必要な治療費や交通費・食費等を無利子で借りられる基金。この基金により、貧困層が治療費等を工面するために収入源である田畑を売って、さらなる貧困に陥ることを防ぎます。
■「リボルビングファンド(回転基金)」とは?
稲作や小規模事業等のために融資を行い、一定期間内に利子をつけて返済してもらう仕組みです。負債が出た場合にはグループ内で相殺するシステムを導入しています。
初年度は30世帯が緊急搬送基金を借り入れ、医療サービスにアクセスすることができました。この基金は無利子ですが、完済するまで次の借り入れはできないルールとなっています。
そこで、再度緊急医療費が必要となるケースに備え、繰り上げ返済するメンバーも増えてきました。負債の解消が課題となっていますが、緊急搬送基金へのニーズの高さを実感しています。
パーコーン村の貧困世帯のウォンさんは、2019年初旬に基金から借り入れをし、無事に病院で出産することができました。もし基金がなければ、彼女は不衛生な自宅で出産し、母子の命を危険にさらしていたかも知れません。
International Support and Partnership for Health
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