村のリボルビングファンド支援のその後

ISAPHラオス事務所がサイブートン郡パーコーン村で女性を対象に実施している(注1)リボルビングファンド支援が、遂に今年8月から稼働し始めました。開始後3カ月が経ち、今後の見通しも立ってきたここで、その進捗を報告したいと思います。

この基金は村の基金委員会が家族開発基金と命名した枠組みの中に、緊急搬送基金と小規模融資を行うリボルビングファンド(回転資金)、貯蓄が存在します。8月からは、その中でまず緊急搬送基金と貯蓄をスタートしました。

8月の家族開発基金デー(注2)には、各メンバーに通帳代1万キープ(約130円)と毎月の最低貯蓄額1万キープの合計2万キープを用意してもらう必要があったため、本当に住民が準備できるのか、不安を抱きながら当日を迎えました。

その結果はというと……参加を表明していた65名中 63名が出席して全員通帳を購入し、貯蓄額は合計96万キープ、一人平均1万5千キープとなりました。その後の2カ月間も、毎月122万キープの貯蓄となり、参加率も平均97%を記録しています。貯蓄メンバーも着実に増えて10月末の時点で77名(村の全世帯の42%)となり、予想以上の順調な滑り出しとなりました。

貯蓄と共に開始した緊急搬送基金では、開始から3カ月半が経過した10月末時点で、6世帯が基金を利用し、病院にアクセスすることができました。この基金により、住民が緊急時に必要な治療費や交通費・食費等を無利子で借りられるため、病院に行けば救えるはずの命を救い、貧困層が治療費等を工面するために田畑を売って、更なる貧困に陥ることを防ぎます。

ここで、パーコーン村の貧困世帯による基金活用の一例をお伝えしたいと思います。村で一番貧しい世帯として村の委員会が認めているウォンさんは、妊娠中の大きなお腹で子どもを抱えて、これまで一回も休まず貯蓄にきており、現在までに計3万キープの貯金があります。彼女は昨年、病院に行くための交通費1万キープを用意できず、第4子を生後2カ月で亡くした経験があります。その彼女が毎月貯金を積み立てることで、緊急時には自分の貯金を下ろし、郡病院を受診することができます。また、村から片道3時間かかるカムアン県病院を受診したい場合には、貯金で賄えない不足分を緊急搬送基金から借り入れることも可能になります。このように、私たちにとっては「たった130円」のお金を準備できずに住民が命を落とすことがないよう、貯蓄と緊急搬送基金は各世帯にとって大変重要となります。

この基金では、貧困層のための特別優遇制度(通帳の無料配布や低貯蓄額の設定)を設けていますが、ウォンさんが誇りに溢れた顔で一般世帯用の金額設定で毎月貯蓄を行っているのを目にしたとき、「必要な仕組みを整えてあげることで、村で最も貧しい住民でも自助努力によって家族を守り、自分たちの生活を向上していけるのではないか」という希望の光が見えました。

2019年1月からは、順調な増加が期待される住民の貯蓄と、過去の他団体からの支援による負債回収の一部を原資として、リボルビングファンドも開始する予定です。今後、リボルビングファンドを含めた全体の基金システムをきちんと稼働させ、その利益で村がビジョンとして掲げた「村の子どもたちの健康・教育の改善」のために、そして各世帯・村全体が自分たちのニーズや課題を自ら解決していく力をつけていくために、ISAPHとして惜しみない技術支援を続けていきたいと思います。

(注1) 世帯に女性がいない場合は、男性も参加可能
(注2) 毎月中旬に貯蓄や小規模融資の手続き・支払いのために村の基金委員会と住民が集まる日のこと

ISAPH ラオス 木村 江里子

通帳を購入する村の女性たち

熱心にお金の管理や会計簿への
記帳をする委員会メンバー

緊急搬送基金を利用して病院を
受診した子どもとお母さん