2015年2月12日~19日に、聖マリア病院初期臨床研修プログラム 地域保健・医療分野 国際保健コースの受け入れを致しました。参加者の方からいただいた報告を以下に掲載します。
ISAPH 事務局
ISAPH活動を通じて感じたこと
今回の研修のメインであるラオス国カムアン県タケク地区におけるフィールド調査では主に寄生虫感染の分野で現状の把握やActive Planの作成までを行いました。調査前に下準備をして挑みましたが、実際の調査では自分の考えの根底を覆させられる現状も多く、低開発途上国(LDC)における国際医療保健の難しさを感じずにはいられませんでした。カムアン県病院では医療設備や手術も見学させていただきましたが、日本とは異なる衛生管理や術中の麻酔管理などを肌で痛感することが出来ました。
今回の研修を終えて、私も将来何らかの形で国際医療保健に携わりたいと感じています。ただしそれは今回のように何もない所から医療保健を築きあげていくような過程ではなく、あくまで医療従事者として患者の治療を中心とした活動です。その中でNGOスタッフへの配慮、感謝の念を決して忘れないようにしたいと思います。それが私の中での今回の研修で経験したことを活かす手段だと感じています。
最期にこのような貴重な経験をさせていただいた聖マリア病院、また引率を務めてくださった浦部大策先生、現地で丁寧な指導をしていただきましたISAPHスタッフの方々へ心から御礼を申し上げます。
タケク地区に初めて訪れた時のランチにて
ガパオライスとの出会い
ラオスでの研修を終えて
今回国際保健コースで研修を行うまで、私の国際医療に対するイメージは開発途上国で限られた機材を駆使して全身を診察し、治療する医師という漠然としたものでした。しかし、国際医療には自身の医師としてのスキルを生かして医療活動を行うものと、現地における地域問題の現状把握から問題分析を行い、防ぎうる死や疾病を防ぐ公衆衛生学的分野からのアプローチがあることを知りました。ラオスの医療施設は医療レベルの高い順から、中央病院、県病院、群病院に分けられ、最も大きいマホソット病院は450床ありますが、他の中央病院や県病院は150床程度です。国の総病床数は7000床弱、人口10万人あたり130床程度と極めて少ないとされています。こうしたデータを聞き、こんなに病院が少ないなら、病院には患者があふれているのだろうと思っていると、実際の病床はガランとしており、その稼働率は中央病院でも60%程度であり、群病院はほとんど患者もおらず閑散としていました。ラオスを含む開発途上国では、保健制度の導入が十分でなく、また国の予算も限られていて病院でも十分なサービスを受けることができません。本来入院治療が必要な患者でも、高い自己負担のため、病院を受診していない人が非常に多いと知りました。このような国では、一旦病気になってしまうと、治療費は多額になり大変な負担ですが、病気に対する予防費は低額で済み、こうした活動で感染症や低栄養などになる人が減少し、地域ひいては国にとって大きなメリットとなるということを感じました。
実際にISAPHのスタッフの方と対象地区の村に入ると、多くの母子が体重測定に訪れ、1歳未満児については100%の参加率が達成されており、根気強いアプローチのすえにしっかりと根付いていたシステムに大変感動しました。国際保健活動の基本が国の内外を問わず公衆衛生学的な考え方に根差した「地域医療活動」の実践である、ということを改めて感じるとともに、文化や考え方、習慣も異なる国での活動では自分たちの考えを押し通すことだけでなく、違いを受けいれ、その環境での最善の方法を模索することで、地域に根付いた活動が完成していくのだと感じました。今回、大変貴重な機会をいただき、このような経験ができたことはこれから医師として働くだけでなく、今後さまざまな問題にアプローチする上で大きな糧となると思います。10日間という期間ではありましたが、大変貴重な経験となりました。
病院見学にて
ラオスにおける研修で学んだこと
今回、私たちは聖マリア病院初期臨床研修プログラムにおける国際保健コースの一環として、後進国であるラオスに実際に赴き、様々な公衆衛生活動に参加する機会を頂きました。私は後進国が抱える問題の中から麻疹の予防接種に焦点を当てました。ラオスはWHOが行う拡大予防接種計画(EPI)に基づき結核、ポリオ、ジフテリア、破傷風、百日咳、そして麻疹の6つの感染症に対する予防接種を強化しており、2000年にはポリオの根絶達成が宣言されました。次なる根絶目標として強調されている疾患が麻疹ですが、近年ラオス国内の多数の地域で麻疹の流行が報告されるようになってきました。麻疹の流行状況や予防接種状況を調査することで、このような現状が何故起こってしまっているのかの一因を探ることができると考えました。
ラオスではまず県保健局および郡保健局を訪ね、麻疹の流行状況や予防接種率等の情報を得ました。これらを踏まえた上で、実際に1つの村に赴き、住民の方々に対して聞き取り調査を行いました。そこで麻疹予防接種に関する問題点として、①情報伝達等がうまくいっていない、あるいは、住民の麻疹の知識不足のため単純に予防接種率が低下していること、②ラオス国民の身長、体重等の身体的脆弱性のため、予防接種後の抗体価の上昇が良好でないこと、③県および郡保健局などの機関が地方の麻疹の流行を把握しきれていないことが挙げられました。これらの問題点を見直すことでラオスにおける麻疹の流行および予防接種率の低下を防ぐことが可能であると考え、帰国後Action planを構築しました。このような考え方や解決策の構築の手法は医師としても非常に重要なものであり、講義を通してそれらを学べたことも有意義でした。
最後になりましたが、御世話になりました浦部先生をはじめ聖マリア病院国際事業部、現地ISAPHの職員、青年海外協力隊の皆様方にはこの場を借りて感謝申し上げます。
健康教育の参加者に石鹸を配布