ISAPH の活動対象地域で、乳児死亡率が異常に高いsub-district があることが分かり、その原因究明と対応策を図るために調査を実施する必要がある。
- まず、乳児死亡の調査に関して、ビエンチャンで中央レベルの関係者と情報交換をした。面談者はブントン氏(栄養専門家)、ラッサミー氏とセンチャン氏(倫理委員会)、露岡氏(WHO ラオス)、ニュートン氏(マホソット病院臨床検査科)、ドンダオ氏(マホソット病院小児救急外来、ビタミンB1 の第一人者)であった。
詳細は子どもの死亡の59% が栄養由来のものであり、生後2 ~ 3 ヶ月で亡くなっているのは食事のタブーと間連があるのではないかという話になった。死亡の月数や臨床症状(急に機嫌が悪くなり、泣いてお乳を飲まなくなり、“かっ” と四肢を硬直して亡くなる)などから死因はビタミンB1 欠乏による脚気の可能性がある。他の死因として、破傷風、中耳炎、髄膜炎などが考えられるが、母親の弁によると、亡くなった月数や熱がなかったからこれらの疾患は外れるのではないか。脚気の急性症状時に的確な対応(ビタミンB1 の筋注あるいは静注)をすれば児は救える。
現在、ニュートン氏が関係している機関でプリックテストによるビタミンB1 測定方法を開発中である。また、将来、全国規模のビタミンB1 の調査を計画中である。ビタミンB1 欠乏に対し、ラオス政府の取り組みが必要であり、ISAPH がこれらの調査をするのであれば、カムアン県保健局の協力が必須であるなど貴重な情報が得られた。 - セバンファイ郡の高乳児死亡率に関してラオス側カウンターパート(県および郡保健局職員)との話合いを行った。芝田さんおよびブンフワナ村で子どもを亡くした母親への聞き取りに参加したラオス人カウンターパート(県保健局の技術課職員)から状況説明を行った。それを受けて、県母子センター長よりビタミンB1 欠乏で亡くなる子は太った子が多く、対応としてビタミンB1の点滴をするとすぐよくなるとのコメントがあった。県保健局管理課長からは本当にビタミンB1 欠乏が原因なのかきちんと調査したい、誰がなにをするか役割をつめたらどうだろうかとの意見が出た。郡保健局長からは調査の内容として、乳児死亡の状況のいいところと悪いところを比較するコントロールスタディがいいのではないかという意見が出され、また、県保健局の技術課職員からは24 時間diet recall 調査をするのであれば、例えば夕食を調理するところに行って量を測るなど、その場で観察したほうがいいというコメントがあった。調査に関してラオス保健省の倫理委員会を通す必要があるか否かは調査の規模や内容によると思われる。ISAPH としてはスタディプロポーザルを県保健局へ提出するまで責任がある。その後、倫理委員会の許可が必要か否かは県が判断することになった。
- ビタミンB1 欠乏による乳児の急性心臓脚気に関する郡病院職員への研修の実施
ビタミンB1 欠乏で亡くなる乳児の急性心臓脚気に対応するため、郡病院母子保健科のカイカー氏をビタミンB1 のスペシャリストであるマホソット病院小児救急外来のドンダオ氏のところへ1 ヶ月の研修に出した。残念ながら実際にビタミンB1 欠乏児には遭遇できなかったが、過去のケースから学ぶケーススタディを行ったとのことである。
ISAPH TOKYO 齋藤 智子