2005年7月下旬から8月の約1ヶ月間、カムアン県9郡のうち5郡で断続的な大雨による洪水の被害がありました。5郡のうちISAPHの活動地域であるセバンファイ郡においては、特に健康被害の報告が多くあり、感染症をはじめ伝染病の蔓延が懸念されました。県保健局、郡保健局からISAPH に緊急医療支援の要請があり、郡保健局職員と共に、郡内7区域50村で巡回診療と衛生教育を実施しましたので、ここに活動の内容と結果について報告します。
活動方法
期間 | 2005年9月6日~19日(2週間) |
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場所 | セバンファイ郡内7区域全50村 |
内容 | 医師、看護師、薬剤師など2~4名のチームを組んで巡回診療を行い、薬剤処方、村の健康管理グループを中心に衛生指導を行いました。 |
方法 | 1週間は被害の大きかったハートヒエンカム区域を1~2チームで巡回しました。2週目は、他6区域を6チームで短期間に実施しました。 |
結果
総計2,750人が集まり、1,661名(女性981名、5歳以下の小児310名)が診療を受けました。疾病別では、皮膚炎(364名)や不衛生な環境による消化器症状(38名)が多く見られました。赤痢(51名)やマラリア様症状(35名)などの感染症症状もありましたが、検査で確定診断ができないため予防的な薬の処方を行いました。また、浸水の時間が経過するにつれて流行性感冒や肺炎などの呼吸器症状(345名)が増加してきました。年齢別では野外で遊ぶ小児の下肢における皮膚症状と50歳以上の慢性疾患の診療が多く見られました。活動終了後の保健局内の報告会議では、疾患を診断する医療機材や検査機器の不足、全体に行う一般的な衛生教育方法の改善、各村にある健康促進グループの協力体制の強化と知識の向上の必要性が指摘されました。
考察
今回、カムアン県内水害被害状況の報告と支援要請を受け、早期に被害状況を視察することができました。また、活動に参加し、スムーズな診療の補助と服薬指導、衛生指導に携わり、健康被害状況を把握するとともに、薬剤補充や不要な薬品の返品など、経費を節約することも心がけました。
活動の計画時には、洪水のため村への道路が寸断され、陸路で村へ入ることが難しい状況でした。晴天になっても田畑の浸水はなかなか引きませんでしたが、村内の水は引いて巡回活動ができるようになった村もありました。緊急支援を村落で行うことの困難さを感じました。できるだけ短期間に支援に入れるように、当初1日1村を巡回する計画でしたが、2日目からは2チームに分かれて巡回することを提案し、その結果5日間の予定が3日間で1区域を終了することができました。このようにして、残る郡内6区域も同様に、医師と看護師でチームを組み1週間で行う計画を立案・実施しました。
今回は、緊急支援のため洪水に関連した疾患の患者を診察するよう心がけました。しかし、このほかに、慢性的な身体症状を持つ老人や妊婦健診を受けられない患者の診察も多くあり、日頃、医療機関や医師の診察を受ける機会が少ないことが考えられました。今後の課題として取り上げていきたいと思います。
ISAPH LAOS 芝田 澄子