タイでの津波災害支援活動と今後の課題

2004年12月26日朝、スマトラ沖でマグニチュード9.0の巨大地震が発生し、東南アジア、インド、アフリカ沿岸を巨大津波が襲いました。ラオスの隣国であり、被災国であるタイ国において、地震発生から2ヶ月が経過した2005年2月26日から5日間、最も被害の大きいとされた南部パンガー県で、支援活動を行ったのでその概要と今後の課題について報告します。

ラオスと文化や言葉も似ているタイでの津波災害は、私たちにとって衝撃的なものでした。緊急支援 こそできませんでしたが、今回ラオスでの第2次調査時に公的機関や他のNGO団体から情報収集を行い、タイ政府や海外からの支援が行き届かない地域が多く支援を必要としていること、また医療分野での支援団体が少ないことがわかりました。そこで私たちは、首都バンコクにおいて『津波被害支援のためのタイNGOネットワーク』の事務局を務めるNGO団体Sustainable Development Foundation(SDF)の代表者を訪問し、現場の状況や支援活動について情報収集を行いました。漁村地域ではまだ被害が激しく、今も支援を必要としているところが数多くあるといわれました。その中でもとくにミャンマーからの出稼ぎ労働者の支援が遅れていました。その理由として、津波によって民家が流されてしまい、身分を証明するものや勤労許可証も紛失してしまいました。この証明書がないと政府からの支援を一切受けられないのです。ミャンマーはタイの沿岸付近を広く覆うような形に位置しているため、タイへの移民者がパンガー県だけでも3万人にも上ります。そこで、最も被害が大きかったパンガー県で、ミャンマー人の支援を行っているTAG(Tsunami Action Group)というNGO団体を通じて漁村地域の避難所を中心に支援活動を行いました。

プーケット島でも、被害状況を視察しましたが、島内の市街地や住宅地における被害はなく、ほとんどは沿岸のリゾート地の被害でした。タイ政府は観光業に力を注いでいることもあり、既にいたるところで改築工事が始まっており、少数でしたが観光客も戻って来ている状況でした。一方、私たちが活動拠点としたパンガー県は津波が大きかったこともあり、住民が生活している漁村地域の被害が目立ちました。共に活動したTAGでは2つのチームがあり、1つは津波で民家が流され紛失したIDカードや健康保険証、勤労許可証の再発行の手続きを代行し、タイ政府からの支援を受ける手続きを行っていました。

もうひとつは生活支援です。私たちが主に行った活動は、①生活に必要な物資の仕分けや配布の手伝い、②配布訪問時に健康を害している人の把握、必要者には受診手続き、巡回診療チームへの同行、③両親を亡くした子供や衛生設備への寄付です。TAGには自らも被災者であり避難所生活をしているミャンマー人のボランティアが3名いました。今後はこの人たちのように自らの立場で指揮を執り、出稼ぎ労働者の避難民をリードしていく人の育成が必要ではないかと思います。

ISAPH の事業として緊急支援活動をめざすときに、統制する人材の育成や、各人のスキルアップ、またODAや他のNGO団体とのネットワークなど日常の準備が今後の課題といえます。

ISAPH 芝田 澄子