第11回ラオス保健研究フォーラム参加報告

オーナーシップを育てること

「オーナーシップ」という言葉は、国際協力においてはよく使われる言葉ですが、日本国際保健医療学会によると、「オーナーシップとは、一般的には『所有者であること、所有権』などを指しているが、国際保健の分野では、『援助機関が考えて途上国の人々に何かをさせる(donor-driven assistance)』という考え方に対して、『途上国の人々が自分で考えて、自分で実施していく』という考え方を指す」と説明されています。とはいえ、人や予算などが不足している現場においては、「自分で考えて、実施していく」ことを促すのは言葉で言うほど簡単なものではありません。そこで今日は、ISAPHがオーナーシップの醸成に際して大切にしている3つのことについてお話ししたいと思います。

まず一つ目は、「場を設ける」ことです。自分で考えるといっても、勝手に事業や活動を考えてくれるわけではありませんから、そうすることが必要となる会議や報告会を開催したり、出席したりする機会をISAPHが作っています。私たちは年に2回大きな事業の報告会を開き、四半期ごとに活動単位での会議を開催しています。活動に問題が発生した場合には、臨時で話し合いを持つこともあります。

二つ目は、「誰かに事業(や活動)を伝える」ことです。ISAPHは自分たちでニュースレターを出し、日本やラオスの色々な場所で活動の報告を行っています。それと同様に、ラオス人の担当官(カウンターパート)にも、「自分たちの活動」として私たちの事業を説明してもらっています。今年10月末には、毎年ラオス国内で実施されているラオス保健研究フォーラムに参加し、会場で活動のポスター展示をしました。足を止めて私たちの内容に興味を持ってくれる参加者へ、私たちがどんな活動を実施しているのかポスターを使いながら説明してもらいました。フォーラムが終わった後に、「来年は、口頭発表(演台に上がって聴衆へプレゼンテーションすること)で活動を報告したい」と一緒に参加したソンブン医師が意欲を見せてくれたことは、本当に嬉しかったです。

最後に大切なことは、「コミュニケーションによってお互いを知り、絆を大切にする」ことです。ラオスの方々の中には、仕事の後の飲み会の場で本音を語る場合も多く、ISAPHはアフターファイブの交わりを大切にしています(もちろん、お酒を飲むことだけではありませんよ)。相手にオーナーシップを期待すると、色々としてほしいこと、頑張ってほしいことが増えていきます。そのような時、私たちもさまざまな方法で相手の気持ちが動くように働きかけていきますが、やはり大切なのは「相手の期待に応えたい」と思わせるようなパートナーになることだと思っています。

もちろん、時にはISAPHが事業を先導していくこともあります。しかし、将来ずっと支援を続けていけるわけでありませんから、最終的にはラオスの方々が「自分たちで考え、実施していく」ようにならなければいけません。私たちはこれらの働きかけを通して、時にはリードし、時には黒子になり、ラオスの方々のオーナーシップの醸成を支援しています。

ISAPH LAOS 佐藤 優
会議では事業に関係する人も招待し、意見に耳を傾ける
第11回ラオス保健研究フォーラムで ポスター発表をするソンブン医師
公的な場よりも本音で語り合いやすい、 和やかな雰囲気の食事会