“協力して”活動していくために必要なこと
第26号のISAPHニュースレター(まだ見ていない方は、是非ご覧ください)で、村で我々の活動に協力してくれるリーダー(村落保健委員会メンバー:注1)たちのやりがいについてお話ししました。今日はその続きの話です。彼らは、看護師や助産師といった免許を持っているわけではなく、一般の村の住民です。それでも、住民の健康を守るために何かしたいと思い、ボランティアで村落保健委員会のメンバーとして活動していることになります。しかし、病気や健康に関することで、一般の人が他者を支援する際には注意が必要です。例えば、市販の薬であっても飲み方を“正確に”指導する場合には専門的な知識が必要ですし、身長・体重を計測する場合でも“正しい手順”を知らなければ、誤った数字を読み取ってしまいます。
私たちが関わっている村においては、毎月アウトリーチ活動が実施されており、小さな子どもを抱える家族に対し、子どもたちの健康に必要な情報や保健医療サービスを提供しています。村落保健委員会のメンバーにも協力をお願いしていますが、主な役割は“事前に住民に声をかけ、集めてくる”だけで、活動中は特に協力できることはありませんでした。そのため、健康教育や身長・体重測定などの時に暇を持て余している姿がよく見られていました。そこでこの度、最初の取り組みとして、子どもの身長・体重測定の技術を学ぶ研修を開催することとしました。そうすることで、まずはアウトリーチ活動を郡保健局職員と村落保健委員会のメンバーが一緒に実施できることを狙います。さらに、(将来的に)母親が子どもの成長を知りたいときに、彼らが計測し、子どもの成長経過について母親と話すことができるようになれば、それらはきっと、住民の健康づくりに貢献できたという彼らの実感を導く材料になるのではないかと考えました。とはいえ、それまでの道のりは簡単ではありません。研修員は「生活のなかでメジャーを使っているから数字を読むのは慣れているよ」と言うものの、“正確に”測ることに対してはあまり頓着がありませんでした。前述したとおり、彼らは保健医療の専門職ではありませんから、正しい方法・手順の重要性については、一つひとつ伝えていく必要があることを痛感しました。
しかし、とても心を打たれたこともあります。私が研修の最後に、「次のアウトリーチ活動では、皆さんと一緒に子どもの身長・体重を測ることができますね」とコメントしたとき、彼らが非常に嬉しそうに、照れくさそうにしていたことです。“正確な”情報を伝えたり、“正確に”数値を測ったりすることは確かに大切ですが、今は郡保健局職員がそれらをサポートすればよいと言えます。それよりも、彼らの「住民のために何かしたい」という想いをどのように汲み取って形にしていくか、そのために何をすべきかを考えていくことが重要になるのではないでしょうか。これからもISAPHは、提供される保健医療サービスの質を向上することだけでなく、それらを受け取る側の人たちと協力して住民の健康を守っていけるように支援していきたいと思っています。
(注1)ISAPHが活動を行っている村の村落保健委員会は、村長、村落保健ボランティア(VHV)や村女性同盟によって構成されています。
ISAPH LAOS 佐藤 優
真剣に講義を聞く村落保健委員会のメンバー
3名1組の実技チェックの様子
誇らしげに研修修了証書を掲げて