マラウイの活動地域にソーラー発電パネルと冷凍冷蔵庫を設置 ~アフリカ支援基金の助成による予防接種実施体制の強化事業~

現在、マラウイ政府は保健政策としてミレニアム開発目標(MDGs)4(乳幼児の死亡の減少)を最優先課題の一つとしています。それには乳幼児の栄養改善が必要不可欠な課題であると考え、ISAPHは現在マラウイ北部のムジンバ県において、乳幼児の栄養改善を目的としたJICA草の根技術協力事業を実施しています。しかしながら乳幼児が適切に栄養を摂取しても下痢や肺炎などの感染症にかかることにより栄養状態が悪化し、健康状態に悪影響を及ぼします。更に栄養障害児は抵抗力が低いため、感染症により死亡に至るケースも少なくありません。ユニセフのデータによると、5歳未満児の死亡の内30%は予防接種で防げると述べています。そのようなことから栄養状態の改善と予防接種の強化が同時に行われることにより、乳幼児の総合的な健康増進が図られると考え、公益信託アフリカ支援基金の支援の下、ムジンバ県保健局と共に活動地域の予防接種体制の改善事業を実施しました。活動地域のムジンゲ村に設置されている保健施設(ヘルスポスト、以下H/P)にワクチン保管のためのソーラーパネルと冷凍冷蔵庫を設置することにより、安定的なワクチン接種の体制を整える計画です。

このH/Pは毎月1回5歳未満児の身体測定とワクチン接種を実施しています。接種するワクチンは、14Km 離れた保健センター(H/C)から毎回搬送されていました。しかし、人員不足や悪天候などにより、しばしばワクチンが搬送されないことがあったため、H/Pに対する住民の信頼は失われ、身体測定を受けずに帰宅する母親もいました。 

事前に行った調査では、既に導入されているソーラー発電冷蔵庫の多くが、バッテリーの問題(バッテリー液が補充されていない、また耐久年数を超え交換されていない)で使用できない状況でした。またパラフィンやガスの冷蔵庫も、燃料の供給が止まってしまったことから使用できないものが多々ありました。そのため、ワクチンを別の場所から搬送してもらうか、母親がワクチンを保管している保健施設に子どもを連れて行かない限りワクチンを接種できず、ワクチンで予防できる疾病の流行時には多くの児が感染してしまうことになります。保健省予防接種拡大計画課やユニセフとどのような機種の冷蔵庫が良いかを協議した結果、バッテリー不要機種の導入を要請されました。

今回ムジンゲ村に設置したソーラーパネルと冷凍冷蔵庫は、バッテリーなしで夜間もワクチンの至適温度を保ちながら保管ができます。また、太陽光が無くても外気温43℃で3日間は、同様の温度を維持できます。このようなことから、この機種はWHO(世界保健機関)やユニセフから推奨されています。この導入により、近郊にある他の2つのH/Cが一時的にワクチンを保管できない状況になった場合には、ムジンゲ村のH/Pから管轄下の村々へのワクチン供給が可能となります。ワクチンの接種が常時可能な状態を提供することにより、身体測定にも参加しやすくなり、栄養改善のための活動への参加も積極的になるものと思います。

最後に、このH/Pにおけるワクチン保管で、今後多くの子どもと妊婦に計画通りのワクチン接種が実施されることを願っています。

聖マリア病院国際事業部 山崎 裕章

設置された冷凍冷蔵庫

盗難防止のため、ソーラーパネルの設置台に
有刺鉄線を巻いている