多様な食材を確保するグループ菜園

2018年5月より始まったJICA草の根技術協力プロジェクト「母と子の『最初の1000日』に配慮したコミュニティー栄養改善プロジェクト」では、子どもの発育状況の把握、手洗いなどの衛生指導、食材の栄養教育や調理実習などを通じてマラウイの母子の栄養改善を行います。それには多様な食べ物が不可欠ですが、調査によると農村では非常に限られた種類の食材しか手に入らず、食べられていないことが確認されました。

色々なもの、栄養のあるものを食べなさいと教えても、そもそも入手できない状況では、言われた側もどうすることもできません。日常手に入るのは主食のメイズ(トウモロコシ)と葉野菜、豆、それにトマト。これらはほとんどの世帯で自家栽培しているので、お金がなくても食べられます。少し大きな集落では小魚や玉子、さらに大きな街になると豚やヤギの肉、牛乳なども売られていますが、自給自足に近い農村の暮らしでは日常的に現金を使う習慣がないため、週に何度も買って食べられるものではありません。

そこで、地域にある母親たちのグループを活かして、2018年末からグループ菜園を立ち上げました。マラウイは年末から雨季に入り、ほぼ毎日、数時間程度の雨が降ります。まず、この雨季には大豆、落花生、それにビタミンAの含有量を強化したサツマイモの栽培を開始しました。豆類は、肉や玉子を食べる機会に乏しい農村では貴重なタンパク源となり、粉末にして離乳食の材料としても使われます。また、ビタミンAは小児の発育に欠かせない栄養素のひとつですが、カボチャやマンゴーの採れる時期を除いて農村ではほとんど摂ることができません。地域の病院は5歳未満の子どもにビタミンAのサプリメントを配布しているのが現状です。

農村における栽培で鍵となるのは堆肥作りです。メイズの栽培には化学肥料の使用が普及していますが、現金で肥料を買う必要があります。しかし、農村では一般的に牛やヤギなどが飼育されているので、家畜糞の入手は容易です。また、ほぼ全ての家庭が薪で調理するので灰もあります。これらと、メイズを脱穀して出た殻や、刈り取った雑草とを混ぜて発酵させた有機肥料の作り方を指導しました。マラウイで畑を見ていると、大抵は肥料不足だと感じます。化学肥料を買わなくても効果の出る堆肥は非常に重要です。

現在、乾季に備えて肥料や土地の準備を始めており、数年前まで全く見られなかったニンニクや、大きな街以外では手に入らないニンジンなどの栽培を計画しています。収穫された作物は自家消費以外にも、売って他の食品を買う資金にしたり、調理実習での使用を計画しています。初めて見る様な食材はなかなか受け入れられないのですが、以前のプロジェクト地域では現地の食事に合うニンジン料理を紹介して好評を得ました。このグループ菜園を通じて食材の選択肢が増えれば、調理実習で様々な食べ方も紹介できます。新しい食材がスムーズに受け入れられる様、栽培方法から食べ方までを啓発していきたいと考えています。

ISAPH マラウイ 山本 作真

有機肥料の作り方講習

グループ菜園での種まき指導の様子

調理実習でのニンジンレシピの味見