2018/11/28

AINプログラム:住民が助け合うということ、その実現のために
~村落栄養ボランティアの育成を通して~

ISAPH ラオス 佐藤 優

資料を用いて栄養について説明するVNV

住民に興味を持ってもらうために、
調理を手伝ってもらう様子

公益財団法人味の素ファンデーションによるAINプログラムのご支援を受け、昨年12月に村落栄養ボランティア(VNV:Village Nutrition Volunteer)を育成するための研修が始まり、今年10月には、その第1期生となるボランティアが研修修了となります。この約1年にわたるボランティア育成の取り組みから得られた、私たちの活動やラオスの方々に対する気づきを今日はお伝えしましょう。

VNVの研修が始まるとき、12名の研修候補生の枠はあっという間に埋まりました。そこから私たちは「きっと、この新しいボランティアが村を変えていってくれるぞ」と大いに期待をしていました。実際に研修がスタートすると、ノートを取ったり、質問をしたりするVNV研修生の積極的な姿勢に、期待はさらに膨らみました。2018年4月からは学んだ知識を住民に伝えていくため、栄養教育や離乳食の調理実演を実施する機会を支援しました。多くのVNVは、これまで知らなかった妊婦や乳児の栄養についてや、住民たちがそれとなく行っている生活習慣について、また、それが子どもたちの成長にどのように良くないのかなど、研修で学んだことを発揮することができていました。しかし、そこで問題が生じました。住民の中に、全く興味を示さない人たちがいたのです。VNVが一生懸命に説明しながら子ども用のお粥を作っていても、全く見ようとも、聞こうともしません。でも、お粥ができたらサッとお椀を持ってきて、美味しそうに子どもと食べています。私が聞くと「お粥は美味しいから好きだけど、勉強はしたくない(分からない)」とのこと。

「VNVの研修を受けたい」と思った人たちは、知識が必要だと気づくことが出来ている人たち、つまり既に高校を卒業するくらい教育を受けていたり、読み書きができたり、あるいは(村の中では)裕福であったりする人たちだったのです。一部の人は、そのような人が話すことを、正しいとは思っていても、興味を持って聞くのが難しいという現状がありました。私たちから見ると、ラオスの農村部として一括りにしてしまいがちですが、村の中にも、それぞれの立場の違いや、仲が良い・悪いなどがあり、このような社会的な背景が、健康に関する情報を得ることに影響しているんだと実感することになりました。私たちは、社会関係の中で生まれるこのような力を「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)」といったりします。住民が住民に対して教えるという活動を経たことで、ラオス農村の住民同士が持つソーシャルキャピタルを垣間見ることとなりました。専門家によれば、この力も活動によって強化することが可能なようです。もちろん、簡単ではありませんが、住民がお互いに信頼し合って繋がり、困った人がいる場合には助け合いの精神が当然、というような機運を村に醸成することができます。そうすることで、手を差し伸べたときに、その手をちゃんと握り返してくれる関係性が村の中に作られていくことになります。

今年の12月からは、いよいよ第2期のVNV研修がスタートします。これからこの活動では、ただ「栄養について話す人を育てる」のではなく、村が、住民が本来持っている助け合いの力を育んでいけるようなボランティアを育てていきたいと思います。少し遠回りになる部分もあるかもしれませんが、そうすることで、「食事・栄養についての情報を、すべての住民に(貧しい家庭や教育歴のない家庭にも)伝える」という本来の役割が、きっとより効果的に発揮されることになるでしょう。