マラウイ派遣レポート

マラウイ共和国での専門家派遣としての活動報告

マラウイ共和国ムジンバ県にて、JICA草の根技術協力事業の支援を受け、NPO法人ISAPH(International Support and Partnership for Health)が当院と共同で実施している『子どもにやさしい地域保健プロジェクト』に関連して、2015年3月から約2ヶ月間、専門家派遣として現地で新生児の調査を行いました。

本プロジェクトはムジンバ県内で対象26村における5歳未満児の栄養状態の改善を目的とし、村人に対して教育を主とした活動を行っています。本プロジェクト開始前に、ISAPHが対象となる村で実施した乳幼児の発育に関する基礎調査によると、生後半年で既に24%の児が慢性の低栄養を示唆する発育阻害児の基準を満たしていることが判明しました。この年齢の児は通常母乳だけで栄養されているはずであるため、私達はこの年齢で既に低栄養状態に陥っている理由を考える必要がありました。その原因として、①早産で生まれた為に、出生時の体重が小さかった、②満期で生まれたのに出生体重が小さかった(不当軽量児)、③満期産、正常体重で生まれたのに、母乳の栄養が不足していた、④出生後に何らかの感染症に罹患し、その結果、栄養を消耗したなどが挙げられました。

我々は、これらの原因の中で、特に出生児の在胎週数の把握、つまり早産で出生したのか、それとも正期産で出生したかを評価するために、Mzimba県病院とEdingeniヘルスセンターで出生となった新生児68症例に対して、新生児の在胎週数評価法の一つであるDubowitz法を用いて、その週数評価を行うことを調査の目的としました。また、現地で従来実施されている子宮底や最終月経日から算出し、カルテ上に記載された推定週数に対して、Dubowitz法により得られた児の推定週数の比較検討を行いました。その結果、個々の同一症例においてDubowitz法を用いた週数評価では、カルテ記載上の週数に比べて、より成熟傾向にあることが判明しました(37.4±1.7 週 vs 40.6±1.5 週)。また、満期で出生したにも関わらず、不当軽量児が占める割合は、カルテ記載上の週数では8.2%であったのに対し、Dubowitz法で得られた週数では18.5%でありました。

このように在胎週数は比較的満期に近いながらも、その週数に比して体重が小さい不当軽量児が出生する理由として、母体自身の様々な要因が影響するといわれています。原因として挙げられる因子には、母体の高血圧、糖尿病、喫煙、薬剤服用、アルコールなどが挙げられますが、母親の低栄養状態も児の発育に大きく影響すると考えられています。今回の調査ではDubowitz法による児の臨床所見からの発育年齢の評価のみで、不当軽量児に対する母体の関係因子については評価出来ませんでしたが、我々ISAPHの活動を通して住民の栄養摂取、特に母親の栄養に偏りがある事が分かっており、不当軽量児の出生にも母親の栄養不良が関係している可能性が強く疑われます。よって、これを解決するためには、今後は妊婦の栄養の改善から取り組む必要があると考えました。

聖マリア病院 新生児科 岡田 純一郎 

診察に御協力頂いた母児