ラオス・マラウイ出張報告

ラオスとマラウイの協力活動で感じたこと

2015年4月2日にラオスの活動地域においてMOU(了解覚書)3の報告会が実施され、聖マリア病院国際事業部部長・ISAPH理事の浦部大策先生と共に私も参加しました。ラオス側からはカムアン県保健局局長、セバンファイ郡郡長、活動地域の村長、その他首都ビエンチャンから保健省官房局及び外務省NGO課の職員も参加するなど、40名を超える関係者による報告会となりました。そこでは2012年から開始したMOU3の成果のみならず、2005年から当地において活動してきた約10年にわたる協力の成果の報告も行われました。大きな成果としては、母子の保健活動への高い参加率、住民の栄養・衛生に関する意識の向上、低体重児の低減や乳幼児死亡の減少などがあげられ、ラオス関係者からも高く評価されました。

ここで注目すべきは、母子の活動への参加率です。妊産婦健診90%以上、発育健診においても乳児が90%以上、1歳以上5歳未満児でも80%という高い参加率を示しています。開始当初は50%にも満たない時が多くありました。この参加率はプロジェクトへの信頼を示す値であると言えます。その信頼関係があるからこそ、住民が健康教育に耳を傾け、その結果が乳幼児の健康増進にもつながっているのです。

もう一点、カウンターパートとの信頼関係も忘れてはならない点です。国際協力はドナーと被援助側との駆け引きが活動に大きく左右します。狐と狸の化かし合いのような状況にもしばしば陥ります。開始当初は、お互いの意見がかみ合わずギクシャクする場面も多くありましたが、現在ではそれが殆ど無くなってきました。それは、カウンターパートとの信頼関係によって駆け引きの落としどころがお互い分かってきたからです。この信頼関係は10年もの間、住民の健康増進のために必死に現場のスタッフが活動してきた実績の賜物です。一方同じ10年もの間、活動を行ってきたマラウイでは、状況が異なります。マラウイも2005年からISAPHが活動を実施していますが、ラオスとは投入の密度がまったく違います。ラオスは2名以上途切れることなく日本から職員を派遣して活動を行ってきましたが、マラウイは1か月未満の短期派遣で協力を実施し、派遣できない時期は現地の協力スタッフにより補うといった程度の活動で、やはり現地の保健局関係者や住民との関わり合いも薄いものでした。その面では、2013年5月からのJICA草の根技術協力プロジェクトの開始から、活動が本格化しているとも言えます。

ラオスの報告会に参加した後、4月中旬からマラウイに派遣され、JICA草の根技術協力プロジェクトの住民参加活動の推進に携わりました。村へのアクセスが厳しい中、職員は活動への母子の参加率を上げるために必死に戦っていました。いかにして住民の信頼を得るか。いかにカウンターパートとのコミュニケーションを向上させるかが大きな課題でもあります。それには村の母子の健康増進を目指し、ひたすら地道な活動を悪路や暑さ、雨に負けず、繰り返すしか方法はありません。やっていることは必ず住民、そしてカウンターパートは見ているものです。生活も活動条件もラオスより更に厳しいマラウイでの環境の中で、日々活動に努力している職員には頭が下がりました。そのお蔭でカウンターパートとのコミュニケーションが円滑になり、住民との信頼関係も築かれつつあることを実感できました。

ラオスから帰国する予定の職員が村に挨拶回りをしている際に、村人がサプライズ送別会を行ってくれ、職員が涙したと聞きました。我々の国際協力は心と心のつながりで成り立っていて、それが国際協力の醍醐味であると痛感しました。マラウイの今後が楽しみです。

ISAPH事務局  磯 東一郎

ラオス 新たな活動場所の候補であるサイブートン郡の保健局にて

マラウイ チボプリラ村の小学校で健康教育